2024.04.02

能登半島の和ろうそく専門店~高澤ろうそく店~

能登半島の和ろうそく専門店~高澤ろうそく店~

明治中期から続く和ろうそくの老舗

1月1日の能登半島の地震は、能登各地に大きな爪痕を残しました。今回も引き続き能登応援として、前回に続き能登半島の伝統工芸について取材してきました。 場所は七尾市(お話は金沢の営業所でお聞きしました)。伝統の和ろうそくを製造・販売する「高澤ろうそく店」です。七尾市の中心街にある古くからの町並み一本杉通りで、130年以上営業を続ける老舗であり、建物は国の登録有形文化財に指定されていましたが、1月1日の地震で倒壊。前部分は崩れ落ちてしまいました。

断水や停電、従業員の被災など、当分は営業再開を諦めていました。物が散乱した工場では出勤できる従業員が片付けをし、機械を調整。和ろうそくの製造工程では水がもっとも大切なのですが、従業員が力を合わせて点検をしたところ、井戸水や用水が使用可能であることが分かり、1月19日、かまどに火を入れて試験操業に踏み切りました。復興に向けての第一歩です。取引先からの応援も励みになり、1月22日から稼働に入りました。しかし、従業員の生活が通常通りになるまでは、本格稼働は難しいようです。また販売店舗は、100mほど離れた場所で3月14日から仮店舗営業にこぎ着けました。

重厚感のある築100年を超える店舗建物(震災前)

震災で崩れた店舗建物。再建プロジェクトが始まっています

地震前の店内では、さまざまな和ろうそくや燭台なども販売

 

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和ろうそくの原料や作り方は?

明治25年(1892)の創業以来、和ろうそくを作り続けている高澤ろうそく店。ここ数年の海外人気で輸出も増えたこともあり、和ろうそく製造は国内シェア1位ということです。

そんな、和ろうそくの作り方を見てみましょう。
和ろうそくの製法は大きく分けて2つ。「手掛け」と「型流し」です。古くから行われてきたのは手掛けで、ろうそくの芯に溶けたロウを手で塗り重ねる方法。手間がかかり少量生産になります。高澤ろうそく店が行っているのは型流し。和紙と灯芯草で作った芯に竹串を刺し、金属や木製の型に入れて溶けたロウを流し込み、水で冷やし固めます。型から抜いたろうそくは1本1本丁寧に小刀で形を整え、ロウがたれにくいように表面を別のロウで仕上げます。手掛けより大量生産できますが、温度管理や仕上げ工程など、優れた職人技が必要です。

和ろうそくの原料は?植物から作るって知っていましたか?古くから使われているハゼの木の実から取り出すハゼの実ロウ、米糠、ヤシ、菜種、漆の実ロウなどが主原料です。

ロウを溶かすための窯は震災にも負けず、どっしりと風格があります

和紙を巻き、さらに灯芯草を巻く

芯に空気穴のための棒を差し込み、ロウを流し込みます

型から取りだして形を整えます

和ろうそくと洋ローソクは何が違う?

和ろうそくの大きな特長は、原料を植物由来としていること(洋ローソクは動物油や石油など)、和紙と灯芯草を使用していること(洋ローソクは糸を編んだもの)です。そのため、和ろうそくと洋ローソクは灯り方も異なります。和ろうそくは芯に空洞を作り、空気の通りをよくする工夫しており、大きな炎が生まれます。また、多少の風では消えにくく、油煙(煤・すす)も出にくく、仏壇などで毎日灯しても拭き掃除が楽というのも大きな特長です。原料が自然由来であることから、里山の保全にも繋がっています。

ここで、耳よりな話。人は和ろうそくの炎のゆらぎに癒される?
和ろうそくの特長である空気の通り道を作ることで、無風状態でも炎にゆらぎが生じてきます。このゆらぎが人にいい影響を与えるということだそうで、実際に、「2013年度照明学会全国大会」で測定された実験結果では、人に快適性を与える可能性があると発表されています。

原料となる櫨(ハゼ)の木の実

九谷焼の燭台に赤いろうそくが映えます

震災前、店舗前にあった玄関灯も和ろうそくでした

 

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近年、人気倍増! 高澤和ろうそくの魅力は?

高澤ろうそく店には、ろうそくの胴に鮮やかな花鳥風月を描いた手描き絵ろうそくがあります。能登半島や金沢は仏教が盛んで、各家庭には大きな仏壇が必ずあります。その仏壇には花を添えるのが日常ですが、雪に閉ざされ花が少ない冬には花の代用として絵ろうそくを備えることもあったようです。椿や菊などの四季の花々を描いたもののほか、花火や金魚などの季節の風物詩もあり、見ているとほのぼのします。

また、和ろうそくの形状は伝統的に2つあり、ろうそくの上部と下部が広がる「イカリ型」とストレートな「棒型」です。高澤ろうそく店では伝統的な形はもちろん、それにこだわらない現代家庭にも合うスタイリッシュな和ろうそくも開発しています。

イカリ型の赤い和ろうそくに花々を手描き

白い和ろうそくにはスイセンやスミレを

菜種油を主な原料として作る菜の花ろうそくは愛らしい黄色

 

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【一本杉通りについて】

高澤ろうそく店の店舗があった一本杉通りは、約600年の歴史があり、昔ながらの町並みが残ります。およそ450m続く石畳の道沿いには登録有形文化財の建物が多く並んでいましたが、今回の震災で多大な被害を受けています。復興・復旧のためのクラウドファンディングもそれぞれ立ち上がっています。応援、支援にはさまざま方法がありますので、お気持ちを能登半島に向けていただければ幸いです。

●一本杉復興マルシェ開催!2024 開催日:4/7、5/5、6/2、7/7、8/4、9/1、10/6、11/3、12/1 です。 被災した七尾市の一本杉通りで復興マルシェが開催されます。今年いっぱい、定期的に行われる予定です。どうぞ、お立ち寄りください。

賑やかに開催される復興マルシェ

 

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たかざわ
高澤ろうそく店
 

●下記店舗は現在営業しておりません。
TEL:0767-62-2323
住所:石川県七尾市一本杉町11
時間:9時~19時
休日:第3火曜
駐車場:2台


●仮店舗の住所はコチラ
TEL:090-4689-1319
住所:石川県七尾市一本杉町37
時間:9時~17時
休日:水曜、日曜

高澤ろうそくさんの商品はこちらからもご購入いただけます

 

かなざわ美かざり あさの

「ひがし茶屋街」にある伝統工芸のセレクトショップかなざわ美かざり あさのでも販売しております。 ぜひお立ち寄りください。

HAKUICHI STYLE

箔一の通販サイトHAKUICHI STYLEで、現在北陸の作家様をご紹介している「がんばろう北陸」のコーナーでも販売しています。ぜひご覧ください。