2025.07.20

癒やしの金沢、~アートのような小さな庭園めぐり~

癒やしの金沢、~アートのような小さな庭園めぐり~

兼六園だけじゃない、金沢の美しい庭園

水戸の偕楽園、岡山の後楽園と並ぶ日本三名園のひとつ「兼六園」を抱える金沢。加賀藩前田家が誇る大名庭園の兼六園は、池や築山、曲水などを備えた圧倒的な美しさを誇ります。前田家に使えた身分の高い武士たちも、自宅住居の庭を競って造園。茶の湯が盛んな金沢らしく侘び寂びを映す茶庭をしつらえ、客人を招いて茶を楽しみ、庭を愛でることも多かったようです。
金沢にはそんな古い邸宅や庭園を公開しているところが多く、住居の庭園といえどもかなり広い庭もあり、それぞれに工夫を凝らしています。今回は【西田家庭園 玉泉園】【千田家庭園】【松風閣庭園】の、3つの庭を紹介しますが、これまでに紹介した過去物件にも庭園つきのスポットもありますので、併せてご覧ください。

●珠姫の寺天徳院(2023.11.22)

●武家屋敷寺島蔵人邸(2023.07.20)

●武家屋敷跡野村家(2022.12.20)

●金沢市老舗記念館(2020.02.05)




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【西田家庭園 玉泉園】

兼六園の近くにある庭園。加賀藩前田家の家臣を代々務めた脇田家一族が、4代100余年をかけて築いた池泉回遊式庭園であり、造園開始時期は兼六園よりも100年以上古いそうです。脇田家が移住したあとは西田家が庭園を守ってきました。
入口から足を一歩踏み入れると、周囲の喧噪が嘘のようで、静かな緑の風景が迎えてくれます。崖地を巧みに利用した上下二段式の変化に富んだ造りの園内には、数百種もの草木が繁茂し、コイが泳ぐ池にはミズバショウが自生。なんと、この池泉の水源は兼六園の曲水から引いているそうです。
園内上段には金沢最古の茶室といわれる「灑雪亭(さいせつてい)」があり、庭園美を引き立てています。ここでは、お抹茶とお菓子をいただくこともでき、お茶を点てる体験も人気です。
金沢の中心部にありながら園内は静かで野鳥のさえずりがよく聞こえます。取材当日には野生のタヌキにも遭遇。秋の紅葉もことのほか見事だそうで、この雰囲気が気に入り、毎月訪れる県外の方もいるそうです。

起伏に富んだ景観が楽しめる玉泉園本庭

水字形池泉にゆうゆうと泳ぐニシキゴイが人なつっこい

少し高みにある東屋の「梅が亭」から園内を見下ろすのもいい

灑雪亭は内部には入れませんが、外からのぞき見ることができる

茶室から眺める上段の茶庭。緑一色に染まっている

灑雪亭でのお抹茶と季節のお菓子。取材日は御菓子司水本の上生菓子、あさがお

朝鮮五葉松には、お松の方からいただいた種を育てたノウゼンカズラが絡み、取材日は花も

 

西田家庭園 玉泉園・にしだけていえん ぎょくせんえん

TEL : 076-221-0181
住所 : 石川県金沢市小将町8-3
時間 : 9時~17時(12月は10時~16時)
休日 : 水曜(祝日の場合は開園)、臨時休園あり、冬期(12月25日~2月末日)
料金 : 入園料700円、お抹茶とお菓子1700円(入園料含む)、茶道体験4000円(入園料含む、3日前までに要予約)
駐車場 : 石川県兼六駐車場利用(有料)




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【千田家庭園】

加賀藩に仕えた中級武士が多く居住した長町エリアは、「長町武家屋敷跡」として人気の観光エリア。千田家は、犀川から水を引き込む大野庄用水沿いにあり、その用水の水を庭の中心にある池に引き込んで、築山の周囲をめぐらせて再び用水に戻すという池泉回遊式庭園をもっています。
鹿威しをしつらえた玄関の坪庭を通り、資料館を抜けると、目の前に兼六園をぎゅっと凝縮したような風雅な日本庭園が現れます。それもそのはず、明治27年(1894)に、兼六園を模して造られたというミニ兼六園なのです。歩かずして雪見灯籠や滝、築山などが一堂に鑑賞でき、しばし眺めていたい絶景にうっとり。庭いっぱいに草花や樹木が植えられ、春にはツツジやショウブ、夏にはホタル、秋にはザクロ、冬には雪吊りやコモ掛けなど、四季折々に移りゆく自然美が眺められます。
取材日には用水から流れ込んできたアユの群れが庭を横切り泳いでいく姿も見られ、自然があふれる金沢に安堵した筆者でした。

2025年4月から一般公開を始めた千田家庭園

玄関前の坪庭に配した鹿威し(ししおどし)の音が響く

旧加賀藩士だった千田登文と千田家について紹介する資料館

可憐に咲く季節ごとの花々で彩られる水辺の風景

このすずやかな音をお届けできないのが残念。水琴窟は現地で

 

千田家庭園・せんだけていえん

TEL : 080-8735-9695
住所 : 石川県金沢市長町1-4-22
時間 : 9時30分~17時
休日 : 月・木曜、臨時休園あり
料金 : 入園700円
駐車場 : 長町観光駐車場利用(有料)




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【松風閣庭園】

緑濃い本多の森の一角、加賀藩の重臣であった本多家の下屋敷が立っていた場所に残る庭園。このあたりは本多町という町名で、かつての本多家がいかに勢いのある家柄だったかが分かりますね。現在は北陸放送の裏手にあります。作庭されたのは江戸時代初期とみられ、古沼と自然林を生かして造られた武家庭園です。
散策は池の周囲に置かれた飛び石の上を歩きます。池の名前は霞ヶ池、浮島は蓬莱島と名付けられていて、兼六園と同じ?と思ったら、実は兼六園がこの庭を参考にして造られたそうです。うっそうとした大木が繁り、差し込む木漏れ日が爽やか。池の端に四角く入り組んだ場所がありますが、往時はそこから小舟でこぎ出て、池の中央で景色を眺めて一献楽しんだとか。風流ですね。
この庭園への入り口は分かりにくく、過去に紹介している鈴木大拙館(2018.07.20)の脇の小道から入ることができます。非公開区域が広くありますが、無料なので、気軽に立ち寄ってみてください。

鈴木大拙館の横を通り抜けると松風閣への入口に

入口付近にあるのが小舟を留めておく舟だまり

奥に見える建物が本多家の松風閣とその庭園(非公開)

モミジもあり、紅葉時期は華やかに

かつて井戸だったという場所から清冽な水が湧く

 

松風閣庭園・しょうふうかくていえん

住所 : 石川県金沢市本多町3-2-1
時間 : 9時~17時
料金 : 無料
駐車場 : なし