2025.06.10

北陸唯一の大衆演劇場~金沢おぐら座~

北陸唯一の大衆演劇場~金沢おぐら座~

非日常感たっぷり! 旅先で大衆演劇を

金沢駅からIRいしかわ鉄道で7分の森本駅。すぐ目の前にあるのが常設の芝居小屋「金沢おぐら座」です。旅巡業の劇団が月替わりにやってきて、連日、人情味あふれる時代劇やきらびやかな舞踊ショーを繰り広げています。

はるか昔から芝居や踊りは庶民の娯楽でした。金沢でも江戸期から明治期にかけて小屋が立ち、盛んに興行が行われたとか。時代が下って、昭和の高度成長期の金沢には、ひがし茶屋街の背後にある卯辰山に、大浴場や遊園地、動物園や水族館を有する一大娯楽施設「金沢ヘルスセンター」が開業(1958~1993年。途中、金沢サニーランドと改称)。館内の劇場は大衆演劇で大いに盛り上がっていました。

そして2009年、大衆演劇の面白さを発信したいと「金沢おぐら座」をオープンしたのが鷹箸直樹社長です。大衆演劇の魅力について、「お客さんと役者との距離が近くて一体感があること。時代劇といっても分かりやすい構成だから予備知識もいらないし、今どきのアドリブも多くて、楽しませてくれますよ」と語ってくれました。

店内にはフードやドリンクの販売もあり、歩道側の窓口からは高校生らも利用する

歩道側にはオープンテラスを設置。フードやドリンクはここで飲食もOK

 

店内にはゆったりしたソファー席も用意されている

開演前にくつろげる畳の休憩室も利用できる

 
 

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劇場はゆったりアットホーム

座席予約はあらかじめできますが、座席にこだわりがなければ、当日思い立って出かけても大丈夫。最大で180席という会場は、座卓席と椅子席があり、車いすもそのまま入れます。お客さんの8割は中高年ということで、みんなにやさしいバリアフリー仕様です。
公演は原則、昼と夜の2回ですが、日によって変わるので確認を。1公演は約2時間30分。最初の1時間が芝居、30分の座長口上と休憩をはさんで、後半1時間が舞踊ショーという構成になっています。
舞踊ショー(昼公演14:00~、夜公演19:00~)だけ見ることも可能で、料金も割引(ショー割)です。

おぐら座の近くには、当サイトで先に紹介した(2023.08.20)「れんこん料理と旬菜の店 むさしや」があります。森本地区の名物で加賀野菜の「加賀れんこん」料理をいただけるので、昼公演前のランチにおすすめ!
もちろん、飲食しながらの観劇も可。「金沢おぐら座」名物は、寿司桶入りのたこ焼き。トロトロ熱々で8個600円。近江町市場の水産会社から仕入れている脂ののったネギトロ丼900円も人気です。でき上がったら、座席まで届けてくれるという至れり尽くせりのサービス。飲食物の持ち込みもOKというゆるさもうれしい。

 

 



 

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アドリブ連発の芝居と“衿に万札”の舞踊ショー~観劇レポート~

取材当月の公演は「森川竜馬劇団」。本日の演者は、座長の森川竜馬さんを筆頭に、若手の森栄都さん、ゲストの加賀城新太郎さん、女性陣は蘭竜華さんに颯天蓮さんの5人。役者さんが登場すると、お客さんの拍手と鳴子(劇場に常備!)が響き渡って、にぎやかに 幕開け。

 

 

本日の芝居の演目は「故郷の土」。物語は「悪事を働いて出奔した弟が心を入れ替えて帰郷。兄はうれしさを隠しながら、弟のためを思って逆に厳しく接する…」という人情劇ですが、話の筋とは関係のないアドリブが飛び交って、吉本新喜劇のような笑いがさく裂。アドリブがヒートアップして、「えー、このままお笑いで突き進むの?」と思いきや、兄役の森川竜馬さんが、弟を大切に思う長セリフを切々とよどみなく語り切ってクライマックスへ。さすが座長の貫禄。芝居は大団円を迎えました。

 

 

 

 

休憩時間には、座長が舞台の裏話をしながら、今後の公演をPRしたり、スタッフが劇団グッズを販売したり。お客さんが買い求めるのは、役者さんにプレゼントするための根付です。舞踊ショーの合間に、役者さんの帯へはさんで、ご祝儀にします。

 

 

舞踊ショーは、歌曲に合わせた振り付けで、役者さん渾身のパフォーマンス。森栄都さんは女形への早変わりを見せ、颯天蓮さんは宝塚男役ばりの流し目をつかい、座長が艶っぽい女形に変身するなど、見せ場がいっぱい。間奏のときには、お客さんが舞台に近づいて、件の根付を役者さんの帯にはさみますが、根付だけでなく、一万円札や金封を衣装の衿に留める推し括パワー全開のファンも! 万札をひらりとさせながら舞い踊るというシュールな光景はもはや異次元。衣装を取っ替え引っ替え、5人で14曲という、怒涛の舞踊ショーでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 

そして、幕が引かれるやいなや、役者さんはすぐに舞台を降りて劇場前へ。歓談しながらお客さんをお見送りです。お客さんも役者さんもみんなが笑顔で、温かな空気が広がる終演となりました。



 

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「金沢おぐら座」ファンが全国から

「金沢おぐら座」では、大衆演劇を広く知ってほしいと、カップル優待のカップルDAYや子供無料DAYなども設けています。さらに、亡くなった家族と一緒に観劇しようという趣旨で、遺影持参で割引になる「あの世この世祭り」といったユニークな企画も。 また、半年に一度、商店街の店主が役者となって、プロと一緒に舞台に立つ「森本商店街一座」も毎回大入り。2025年3月の公演で19回を数えました。
劇団や地域との絆を大事にしている「金沢おぐら座」には、北陸三県はもとより、全国各地からお客さんが来館。東京や大阪など数多の芝居小屋がある大都市からも、「金沢おぐら座で芝居が観たい」というファンが訪れています。



 

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金沢おぐら座 かなざわおぐらざ

TEL:076-255-1455
住所:金沢市弥勒町ロ68
時間:昼公演12:30~15:00、夜公演17:30~20:00
休日:不定休
料金:昼夜公演共に一般2000円、ショー割1300円、座席指定は追加200円
駐車場:ショッピングセンター「マイモールモリモト」駐車場利用