2026.05.22

原始から近代まで石川県の歴史~石川県立歴史博物館~

原始から近代まで石川県の歴史~石川県立歴史博物館~

元は兵器庫、赤レンガの3棟

金沢の文化施設の多くは、兼六園を中心とした「本多の森」と呼ばれるエリアに集まっています。その一画を占めるのが石川県立歴史博物館。ひと際目を引くのが、赤レンガの重厚な外観です。幅約14.5m、長さ約90mの3つの棟で構成されており、もとは明治~大正にかけて建てられた旧陸軍の兵器庫でした。
昭和21年(1946)に、金沢美術工芸専門学校(現・金沢美術工芸大学)の校舎として活用され、同校の移転後、改修を経て、昭和61年(1986)に石川県立歴史博物館としてオープンしました。歴史的に貴重な建物の保存・復元・活用を実現したことで、平成2年(1990)には国の重要文化財に指定されています。
平成27年(2015)には大幅にリニューアルし、デジタルを駆使した展示が充実。石川県の歴史を総覧できるミュージアムとなりました。赤レンガの建物は、道路側の第1棟と第2棟が石川県立歴史博物館で、第3棟は加賀本多博物館(2020.03.20で紹介)です。

第1展示室は原始から近世まで

第1棟1階には、第1展示室と第2展示室があり、ともに常設展示です。
第1展示室は「原始」「古代」「中世」「近世」に区切られ、その時代の石川県を象徴するテーマを軸にした展示になっています。
例えば、一般的に中世は武士の支配が始まる時代ですが、石川県においては加賀の白山、能登の石動山(せきどうざん)で山岳信仰が高まり、中世後半では一向宗の僧や門徒である百姓が一国を統べる体制を築き上げました。「石動山古絵図」など、信仰による支配を示す、石川県ならではの史料が並んでいます。
「近世」のコーナーでは、金沢の礎を築いた加賀百万石の規模を、長大な大名行列を紹介することで実感できる工夫がされています。
どの時代のコーナーも映像での解説が多用され、展示物だけでは分からない部分を補ってくれるので、時間が許す限り、解説映像のチェックがおすすめです。

「原始」の展示品で特徴的なのは漆芸品。漆塗りは太古から行われており、石川県でも縄文後期の遺跡から出土。輪島塗など現代につながる漆芸の始まりが垣間見える

日本海交易が行われていた「古代」は、渡来文化を象徴する展示が多数。七尾湾の能登島にある7世紀に造られた須曽蝦夷穴(すそえぞあな)古墳もその一つ。墓室の実物大模型の中へ入ってみよう

鎌倉時代における加賀の有力武士の館「堅田館」を、模型や映像で紹介。人物も職業によって細かく作り込まれている

中世のコーナーでは、武士の台頭や、僧と百姓による支配を示す史料を展示

精巧な木製人形による加賀藩の大名行列模型は、23の台に379人、馬13疋、駕籠4丁が並ぶ。加賀藩前田家11代治脩(はるなが)の手記をもとにして作られた参勤交代道中の映像も見もの

19世紀に描かれた「金沢城下図屛風」をもとに、犀川大橋から片町周辺の町並みを表現した模型。現在の通りと比較できるので思わず見入ってしまう

幕末に活躍した北前船史料も石川県ならではの展示。船箪笥や遠眼鏡の実物史料も

 

近代と民俗の空間、第2展示室

第2展示室では、「近代」の史料展示と、加賀や能登の伝統的な祭礼について紹介しています。 明治時代に輸出用として制作されたオリエンタルな趣の九谷焼や、昭和初期の映画のポスター、1960年代から70年代の高度成長期の茶の間の復元など、レトロな展示物は楽しく見学できます。
祭礼については、「祭礼体感シアター」がおすすめ。祭りをテーマごとにまとめた5つのプログラムが繰り返し上映されています。三面の巨大なスクリーンと頭上のスピーカー、床の振動など躍動感たっぷりです。

近代には日清・日露戦争や第二次世界大戦があり、戦時下の暮らしを伝える実物史料が展示されている

高度成長期の茶の間。座敷に上ってテレビの視聴も可。当時のニュース映像が見られる

石川県各地の祭礼を再現展示

祭礼体感シアター。見物客の目線で撮られた臨場感のある映像で、祭りに没入できる

特別展示室では企画展を開催

第1棟の2階には2つの展示室があり、年に数回、さまざまなテーマで企画展示が行われます。他館の貴重な史料や美術品も数多く展示され、見応えのある展覧会です。



取材時、特別展示室は春季特別展「鷹と加賀前田家」。各種の鷹の剥製や鷹道具、古文書や絵画など幅広く展示し、前田家における鷹狩を多角的に紹介

出入り自由の「ほっとサロン」

第1棟と第2棟をつなぐ通路から出入りできる休憩室「ほっとサロン」は、全面ガラス張りの明るいスペースで、外壁が国指定重要文化財となっている第1棟と第2棟をくつろぎながら見学できます。サロン内は飲食OKで、入り口には菓子やパン、飲み物の自販機があって便利。春はしだれ桜も見事。



無料ゾーンのため展示室に入らなくても利用できる

誰でも自由に利用できる「交流体験館」

第2棟の「交流体験館」は、無料ゾーンです。館内にはミュージアムショップのほか、石川県をより深く知るためのクイズや情報コーナー、赤レンガの建物の保存や改修の過程を紹介した「建物100年ギャラリー」、デジタル版の顔ハメパネル「なりきりショット」などのコーナーがあります。
また、ガラス越しに見えるのは、第2棟と第3棟の間にある辰巳用水の石管を使ったモニュメント。金沢市内には数多の用水が整備されていますが、その代表格が全長10kmに及ぶ辰巳用水です。造られたのは寛永9年(1632)。藩政時代の土木技術の高さを今に伝えています。

ミュージアムショップでは、同館のオリジナルグッズや展覧会の図録などを販売

スクリーンに映し出された画像に自分の顔を合成し、それを自分のカメラで撮影する「なりきりショット」。画像は前田利家や埴輪など14種類。2人や3人一緒に合成できる画像もある

兼六園周辺の模型。都市部でありながら緑豊かなエリアであることが分かる

赤レンガの建物の地下構造を見ることができる。昭和58年(1983)の改修工事のものを現状保存

金沢で出土した江戸時代後期の辰巳用水石管。周囲には兵器庫建築当初の縁石や瓦が敷き詰められている

 


石川県立歴史博物館

TEL:076-262-3236

住所:石川県金沢市出羽町3-1

時間:9時~17時(入館は16時30分まで)

休日:無休(年末年始と展示替え期間は休館)

料金:常設展300円(加賀本多博物館との共通券500円)、特別展は別料金

駐車場:45台

石川県立歴史博物館