2026.02.09

ビルが丸ごと迫力のアート空間に~金沢100年の森美術館~

ビルが丸ごと迫力のアート空間に~金沢100年の森美術館~

石川ゆかりのアートを発信

金沢100年の森美術館は、「100年後も残る石川のアートを金沢から世界へ」をコンセプトに、2025年9月に開館した私設美術館です。

オーナーかつ館長は石川県穴水町出身の画家、大森慶宣(おおもりよしのぶ)さん。大森さんは金沢大学英語教育学部在学中にアメリカに留学して美術を学び、卒業後、本格的に作家活動をスタート。一本の線で一気に描くオリジナルのワンストローク技法をベースにしながら、型にとらわれない創作を続け、壁画制作や多様な企業とのコラボレーションなど幅広く活動しています。

さらに、石川県出身の作家や、石川県で制作活動している(または、したことのある)アーティストなど、石川県ゆかりのクリエーターの作品を数多くコレクション。それらを自身の作品とともに公開しているのが、この金沢100年の森美術館です。

作品収集の基準は「遊び心があり、挑戦的かつ個性的で、自分にはない感性を宿しているもの」だそうで、ジャンルは絵画や彫刻、写真、陶芸、オブジェなど多岐にわたります。展示にはケースも使わず、仕切りもありません。間近でアートを見られる親しみやすさが魅力です。

※メイン写真は「龍の背中に乗ってるみたいでしょ」と、いたずらっぽく笑う大森さん


1階「伝統と革新」

同館の建物は、かつての雑居ビルです。1階から5階、さらに屋上がそのまま展示室になっており、1階から順に外階段を上って各階を見学するスタイルです(エレベータは古くて使えません)。
各階にテーマがあり、1階のテーマは「伝統と革新」。大森さんの「風神、雷神図」をはじめとして、伝統的なモチーフを作家それぞれが解釈し、表現した作品が並びます。
奥には子ども用のお絵描きスペースがあり、大きな紙を床に広げて自由に描くことができます。


 

2階「光と影」

2階には、写真家でエッセイストの、中 のはぎ(なか のはぎ)さんによる能登の写真を展示。また、能登にアトリエを構える書家、室谷文音(むろやあやね)さんの書、井波の彫刻師である田中孝明(たなかこうめい)さんの木彫、18歳で岡本太郎現代芸術賞の大賞を受賞した気鋭の画家、大西茅布(おおにしちふ)さんの油絵など、注目のアーティストが競演する空間になっています。

各展示室には、展示の雰囲気に合わせた椅子が置かれていて、それも作品の一部のように見えますが、もちろん座ってOK。作品と空間にひたりたい人におすすめです。


3階「響き」

建物は10年以上使用されていなかった空きビルです。1階から2階、3階と上ってくると気がつきますが、室内は、雨漏りで傷んだ壁や、ひび割れなどをそのまま生かし、さらに壁や床の一部を敢えてはがすなど、大森さんの手によって独特の空間に作り込まれています。

そんなエッジな雰囲気にぴったりなのが、金沢在住のアーティスト、本川 潤(ほんかわ じゅん)さんの作品。3階の一室は本川さんの作品で占められています。オブジェのように見えますが、実はオリジナルの楽器。金属やガラス、岩などを組み合わせたユニークな構造で、本人が演奏している様子を映像で見ることができます。


4階「表現」

壊れたエアコンの室外機がころがっていたり、壁が天井から剥がれていたりと、大きな破損がそのままオブジェになっている4階。そのインパクトに応えるかのように、大森さんの新作が展示されています。自身の名前をモチーフして、ワンストローク技法で一気に描いた油絵が並びます。黒々と勢いのある線は、書のようにも見え、白い室内と相まって、モノクロームの世界を作り出しています。


5階「生きるということ」

「生きるということ」をテーマにした5階奥の部屋では、大森さん自身がくつろいでいる絵や、息子さんを描いた絵、花の絵など、日常の愛おしさを表現した作品が見られます。窓から入る自然光も穏やかで、4階までのアグレッシブな雰囲気を和らげるような空間になっています。


屋上「百年の森」

屋上まで上がりきったゲストを迎えるのは、巨大な白龍。龍は大森さんが大好きなモチーフで、屋上全面にアクリル絵の具で白龍が描かれています。牙をむきながらも愛嬌のある表情が、なんだかかわいい。全体を見渡せる階段から、龍の背中に乗ったような写真を撮れるのも楽しいです。また、ところどころに、能登の陶芸家、中 十七波(なか となみ)さんが手掛けたシーサーが展示されているので、これもお見逃しなく。

さらに、周囲には高い建物がなく、眺望も開放的。金沢城公園から兼六園、本多の森か ら郊外の山々までを見渡すことができ、隣接している金沢21世紀美術館を見下ろせるの も、ここならでは。1階から屋上まで、心揺さぶられる新鮮な美術館です。


金沢100年の森美術館 かなざわひゃくねんのもりびじゅつかん

TEL : なし(連絡はInstagramで)
住所 : 石川県金沢市広坂1-2-34 箔一ビル
時間 : 金・土・日曜の11時~17時
休日 : 月~木曜 
料金 : 1000円(学生800円、6才以下は無料)、大森さんによる一筆描き似顔絵は、はがき2000円、色紙3000円(共に1名分の料金)
駐車場 : なし