2025.09.02

高貴な日本の美。粋なお茶屋街で~金箔工芸体験~

高貴な日本の美。粋なお茶屋街で~金箔工芸体験~

ほぼ100%、金沢で生産される金箔

遙か昔から人々を魅了し続けてきた黄金の輝き。そんな金の箔生産量ですが、なんと金沢が全国シェア99%以上を占めているのです。
金沢では金箔のほか銀箔、プラチナ箔なども製造していて、この3つを総称して「金沢箔」と呼んでいます。箔製造が行われたのは藩政時代からといわれ、加賀藩前田家が工芸文化を奨励していたことで職人の技術が磨かれたことや、金箔生産に必要な良質の水、湿気を含む気候など、さまざまな条件がととのい発達したと考えられています。
製造工程は少しの狂いも許されないため、神経を張りつめた手間と労力が注ぎ込まれてきました。

その金箔が観光とも結びつき、金箔を利用した工芸品が土産として重宝され、現代に生きるつややかな小物雑貨が生まれてきました。さらに、金箔の箔打ちに使われた打ち紙が、昔から女性の化粧直しに使われていたことから、あぶらとり紙として考案され、金沢から全国に広まっていきました。
その先駆けとしてアイディアを出し続けている金箔メーカー、箔一。

今回は、ひがし茶街にある「金澤しつらえ」で実施している金箔工芸体験に参加してみました!


金箔を使う工芸体験にチャレンジします!

かつてお茶屋だった建物でいざ体験

金箔工芸体験はひがし茶街にある「金澤しつらえ」で開催しています。
建物はおよそ200年前のお茶屋の建物を利用。外観は赤いベンガラ塗りの出格子窓が特徴で、1階が伝統工芸品のギャラリーショップ、2階には工芸体験場所と茶房やなぎ庵があります。

では、さっそく金箔工芸体験の流れを紹介していきますね。

【体験1. 建物の案内があります】

まずは、金澤しつらえの建物について説明があります。
築200年、お茶屋建築の代表的な様式を備えたベンガラ塗りの外観と木虫籠(きむすこ)の格子について説明。
木虫籠格子とは、外から中が見えづらいが、中から外はまる見えという不思議な格子のことです。また内部では、ふすまを開けると芸妓が舞を披露する小さな部屋があることなど、お茶屋独特の話が聞けます。

茶屋街の入口、柳の木の前にある金澤しつらえ

2階の渡り廊下は、ガラス素材に金箔貼りという撮影スポット!

【体験2. 金箔の説明と箔移しの実演】

次に、体験に使う金箔とは何か?の説明をしてくれます。金箔はとにかく薄い、1万分の1ミリという想像もできない薄さ。それを扱うのは至難の業で、空調や鼻息でも飛んでしまうのです。ここでは箔職人が金箔を切りそろえる「箔移し」の技を見学できます。紙と紙の間に挟んである極薄の金箔を竹の道具で真四角に切り、別の紙に挟みます。
このときに出る金箔の切れ端を体験に使うことになるのです。

まるで神業のような箔移しの作業がすぐそばで見られる

金箔の後ろから青いライトを当てると透けて見える、それほど薄い金箔

【体験3. 金箔工芸体験をします】

さあ、いよいよオリジナルの金箔工芸品づくりに挑戦です。あらかじめ用意された漆器の皿に、粗めの金箔と細かめの金箔をふるい落とし、おぼろ月の柄を入れる体験です。金箔の量により、おぼろ具合が異なるため、自分だけの個性的なおぼろ月が描けるのが魅力。慎重に、かつ大胆に金箔を振り落としてみましょう。ただし、金箔が飛んでしまうので、鼻息だけは小さめにね(^_^)

う~ん、なかなかいい感じに振り落としていますね

余分な金箔はやわらかな綿でそっと拭いて払います

【体験4. お抹茶と和菓子をいただきます】

一連の工程が終わったら、金箔がはがれないようにコーティングをしますが、この作業はプロの方がしてくれます。コーティングが乾くまで15分ほど、空いた時間には、茶の湯が盛んな金沢ならではの和菓子とお抹茶で一服です。和菓子は金沢の老舗菓子店、森八の上生菓子。抹茶碗は金沢で350年の歴史を誇る窯元、大樋焼。茶色に輝く飴釉が特徴の大樋焼窯元は現在、十一代大樋長左衛門が襲名をしています。※森八本店および大樋焼美術館は、金澤しつらえから徒歩約7分、道路を挟んで斜めに向かい合ってありますので、ぜひ立ち寄ってみてください。

生菓子の銘は「結び柳」で入口に立つ柳の木がモチーフ。抹茶碗は十一代作の「大樋焼」、抹茶は上林茶舗の「綾の森」
※生菓子は季節により入れ替わる場合があります。

お茶をいただく順序は?「先に和菓子ですが、いいんですよ、お好きなように味わっていただければ」、スタッフの言葉にホッ

【体験5. できあがり!】

お抹茶が終わるころ、コーティングがととのい、運ばれてきました!これからがクライマックス、最後の仕上げです。最初に貼ってあった円型のテープをはがす作業です。はがすと徐々におぼろ月の全貌が明らかになっていく、大切なシーン、そっとそっとはがします。「できた!」「わぁー、ステキ!」、体験者一同、みんな大満足の笑顔が印象的でした。金箔体験は外国人観光客にも人気でかなり増えているそうです。

●体験の所要時間は90分~120分。料金は1名1万6500円(税込)。最少2名~、最大人数8名。7日前までに要予約。Web予約も可能

あせる気持ちは分かるけど、落ち着いてはがしてね

完成の記念写真。「どう?おぼろ月、いい感じでしょ?」

今回の体験者は4人、それぞれ個性的で美しい作品ができあがりました!

 

時間があればショップでじっくり品定め

金澤しつらえの1階は、厳選された工芸品が並ぶギャラリーショップです。
金沢箔の工芸品をはじめ、輪島塗や山中漆器、九谷焼、大樋焼、加賀友禅、加賀象嵌など、丁寧に作られる作家の作品を集めており、さながら工芸品の美術館のようです。
重要無形文化財保持者(人間国宝)や文化勲章受章者、伝統工芸士などの作品も揃い、作り手の思いが伝わってくるようです。

2階にある「茶房やなぎ庵」のスイーツも見逃せませんね(次号で取り上げますよ!)

ひとつひとつじっくり眺めて、手に取って品定め

華やかな加賀友禅の扇子、暑い夏はバッグに入れておくと便利

 

金澤しつらえ・かなざわしつらえ

TEL : 076-251-8899 (体験は 076-240-8911 箔一直販マーケティング課)
住所 : 石川県金沢市東山1-13-24
時間 : 9時~18時 ( 体験は火曜日・木曜日 10時~、14時からの2回 )
休日 : 1月1日
駐車場 : なし