2021.06.20

中能登に受け継がれる手仕事~能登上布~

中能登に受け継がれる手仕事~能登上布~

涼しげで肌触り抜群。美しい能登上布の魅力

能登上布(のとじょうふ)は能登半島の中ほど、中能登町や羽咋市に伝わる麻織物。言い伝えによれば、およそ2000年前に崇神(すじん)天皇の皇女が滞在した折に、この地に機織りの技術を教えたのが始まりだとか。江戸時代には近江から技術者を招き、加賀藩の庇護(ひご)のもとで発展を遂げました。最盛期の昭和初期には120軒以上の織元が技と品質を競い、麻織物の生産高は日本一に。しかし現在、能登上布の伝統を受け継ぐ織元はただ1軒となりました。

能登上布の魅力は、手織りならではの風合いと緻密な絣(かすり)柄にあります。光沢のある生地に触れてみると、軽くさらりとした肌触りにたちまち魅了されるはず。機械織りでは表現できない涼しげな透け感や、気品のある絣柄が、手仕事ならではの味わいを醸し出します。

全国にファンの多い能登上布ですが、その工程はとても複雑。原糸の糸繰りから、糸を染める工程、機織りまで全てを手作業で行います。なかでも能登上布の特徴でもある細かな絣柄には、独自の伝統技術が生かされています。精密な設計図をもとに木型を作り、くし型の道具を用いて糸を染める櫛押捺染(くしおしなっせん)、ローラーを使うロール捺染、いずれも能登で独自に受け継がれてきたもの。染め分けた絣糸は設計通りになるようにズレを微調整するなど、丹念な準備工程を経てようやく機織り工程へと送られます。

気の遠くなるような工程を経て完成するまでには、無地や縞で長くて1カ月、複雑な絣柄なら半年以上かかるものも。伝統的でありながら、どこかモダンな趣も感じさせる絣柄は、優しくて忍耐強く、細やかな能登の人々の印象と重なります。

能登上布をより深く知るなら

能登上布の産地を訪ね、伝統の技を実際に見学するならこちら。ただ1軒の織元となった羽咋市の山崎麻織物工房と、技術の保存継承のために能登上布振興協議会が運営している能登上布会館で、工程の見学ができます。

■山崎麻織物工房

1891(明治24)年に紺屋として創業し、現在は4代目の山崎隆さんが伝統を受け継いでいます。着物離れや後継者不足から能登上布が衰退の危機にあった中でも、先代は市場のニーズに合わせて広幅の反物が織れるよう織機を改良するなど、果敢なチャレンジを続けながら技術を守り伝えてきました。
織元が1軒だけになり技術の継承が危ぶまれた時もありましたが、能登上布を織りたいという人が全国から続々とやって来て、現在は14人の織子が携わっています。
同工房で織り上げる能登上布の特徴は繊細な絣柄。絣糸を染めるための木型が代々伝えられており、その緻密さはため息が出るほど。縦横3㎜ほどの十字模様が並ぶ蚊絣や、すっきりとした亀甲絣など、100以上の柄があるそうです。
工房にはショップも併設されており、スカーフやバッグなどの小物が人気を集めています。見学の折に、ぜひ立ち寄ってみてくださいね。

カシャン、カシャンとリズミカルな織機の音が響きます

代々受け継ぐ道具。改良や修理をしながら使っています

能登上布は織る前に模様の位置に色を入れる先染めです

昔ながらの柄見本も受け継がれています

洗練された絣柄と、手織りならではの風合いが魅力

山崎麻織物工房では反物や小物雑貨などの購入もできます

■能登上布会館

能登上布の保存と継承を行う施設で、能登上布振興協議会が伝統技術を受け継いでいます。館内には地元の織元から譲り受けた織機など昔ながらの道具が並び、会員たちによって糸を染める櫛押捺染や管巻き、機織りといった各工程が行われています。見学のほか機織り体験も可能で、30㎝のランチョンマットサイズで1700円~、70㎝のテーブルクロスサイズで3800円~(すべて要予約)。

販売コーナーには財布やコースターといった小物やシャツなど多彩な品が揃います。反物の切り売りも行っており、能登上布でオリジナル小物を作りたいという人に喜ばれているそうです。

会員の手によって能登上布の技術が受け継がれています

館内で織られた反物などが並ぶ販売コーナー

さまざまな柄が揃う能登上布の反物切り売りは1m5200円~

 

《ショップ紹介》

山崎麻織物工房

やまざきあさおりものこうぼう

TEL:0767-26-0240
住所:石川県羽咋市下曽祢町ヲの部84
時間:見学は9:00~17:00(要予約)
休日:日曜
料金:見学無料

能登上布会館

のとじょうふかいかん

TEL:0767-72-2233
住所:石川県中能登町能登部下134部1
時間:9:30~16:00(10月~3月は9:30~15:00)
休日:月曜(祝日の場合は翌日)
料金:入館無料
※機織り体験は2021年6月現在、制限を設けながら実施。要事前確認。