加賀藩ゆかりの由緒ある琥珀色の湯
深谷温泉は金沢北部の山間にあり、創業は寛政元年(1789)。加賀藩年寄役(他藩でいう家老職のこと)の前田土佐守が深谷の湯で病を治したことから、藩士や町人なども利用できるように加賀藩が温泉場を整備。その昔は、口ノ湯、中ノ湯、元湯の3つの宿がありましたが、現在は元湯のみが残っています。
元湯石屋の源泉は、琥珀色の湯色と滑らかな湯触りを特徴とするモール泉です。植物由来の有機物や天然の保湿成分などを豊富に含み、美肌の湯と称えられてきました。この名湯を求め、竹久夢二、近衛文麿、北大路魯山人などあまたの文人墨客が訪れたそうです。なかでも内閣総理大臣や外務大臣など要職を歴任した近衛文麿は元湯石屋の湯を非常に気に入り、「霊泉」と揮毫し、源泉を樽に詰めて京都の自宅へ運ばせたという記録が残っています。