2023.04.26

ゴージャスな金箔を深く知る~金沢市立安江金箔工芸館~

ゴージャスな金箔を深く知る~金沢市立安江金箔工芸館~

金沢箔の製造過程や箔の性質などを学ぼう

金沢の代表的な伝統工芸である金箔工芸は、初代加賀藩主・前田利家をはじめ、代々藩主が豊かな財力を注いで奨励・保護されてきました。そもそもの金沢箔の始まりは定かではありませんが、文禄2年(1593)、豊臣秀吉の朝鮮出兵の折、利家が肥前名護屋の陣中から金銀箔打ちの命を出したという記録が残されています。その後、京都から優秀な指導者を招くなど、400年以上を経てなお、全国でも群を抜く1万分の1mmという極薄の製箔技術を保持しています。

その金沢で名工と謳われた故・安江孝明氏は「金箔職人の誇りとその証」を後世に残したいと、私財を投じて金箔工芸館を建設。収集した美術品や道具類を展示するほか、金箔の性質や金箔製造過程を紹介し、金箔が織りなす多彩な美の世界を体感することができる金箔専門博物館を開館。施設はその後金沢市に寄贈され、平成22年(2010)に現在地に移転。町家の蔵をイメージした建物に一新したのが現在の金沢市立安江金箔工芸館です。

金箔の製造過程や箔の性質などを分かりやすく展示

金箔がふんだんに使われる金沢仏壇の展示と映像コーナー


 

2階は常設と映像、企画の展示コーナー

2階にある常設展示室は、大人も子どもも金箔について学べるさまざまな工夫が凝らされています。展示室に入るとすぐに金箔スクリーンがあり、箔の世界へといざなってくれます。金沢箔が今日のように隆盛を見るようになった歴史や、金を1万分の1mmの極限の薄さに延ばす巨大な箔打機の展示、金箔の元となる合金を造る金合わせと呼ばれる工程から仕上がりまでの製造工程などを、実際に職人が使っていた道具も並べて丁寧に解説しています。1万分の1mmってちょっと想像できませんが、向こうの景色が透けて見えるそうです。

金箔の製造過程や箔の性質などを分かりやすく展示

続くコーナーはおもしろ箔物館と称する展示。金と他の身近な金属との重さの違いを体験できる仕掛けをはじめ、金箔の種類をゲーム感覚で学んだり厚みを体験できるコーナーなど、金の性質を子どもたちにも分かりやすく紹介。金箔の薄さも体感できます。

楽しく学べるコーナーも

 

常設展示室から企画展示室につながるスペースには「100枚の金箔」と名づけられたオブジェがあり、職人の巧みな技で仕上げられた金箔が、作品へと変貌していくことをイメージ。映像コーナーでは「金沢金箔ができるまで」「四季に煌めく金箔」などの映像を自由に鑑賞できます。

時を経ても輝きは失われない100枚の金箔

その奥が企画展示室で、館の所蔵品を中心に年4~5回の企画展を開催。中世後期から現代までの金箔関連の作品を展示しており、金屏風や陶磁器、漆工芸、金工、金箔工芸などさまざま。収蔵庫には金箔製造道具、工程見本、美術工芸作品などを収蔵しており、美術工芸作品の中の主なものには、「洛中洛外図屏風」「能装束庵に草花文様唐織」「松に鶴蒔絵硯箱」「截金十一面観音像」「色絵金襴手花生」などがあります。

箔を使ったさまざまな作品を展示(企画展により内容が異なる)


 

パラボラアンテナが金箔に覆われオブジェに

金沢市立安江金箔工芸館の外壁や内装には金箔が多用されていますが、中でもひときわ目を引くのは、ホールの天井に施された「金箔パラボラ天井」です。直径2.4mのパラボラアンテナの凸部分の球面上に、約600枚の純金3号といわれる金箔が貼られ、ゴージャスな雰囲気を漂わせています。このパラボラアンテナは、東京都大田区の工場で「へら絞り」という工法で作られたもので、回転するアルミ板に人の力で金属棒を押し当てて成形。この曲線は加工が難しく、人間の手のみ。機械ではできないものなのだそう。さらにこの技術は、ロケットなどの宇宙開発のためにも応用されているといいます。

館のシンボル的存在の金箔パラボラ天井


 

館内にあるそのほかの施設

1階には、開発商品の一例として金箔をふんだんに使ったテーブルと椅子が置かれています。ガラステーブルには、10.9cm角の金箔が140枚、肘掛椅子1脚には同サイズの金箔が53枚使用されていて、まばゆいばかりの輝きを放っています。だれでも自由に座って休憩することができます。

3階には「金沢箔技術振興研究所」を併設。ここでは、金沢箔に関する研究や箔製品の修復技術の研究、後継者育成のための研修や産地イメージの構築や、箔に関する文献・映像資料などの収集や箔の歴史調査、通史の作成などを行うアーカイブ機能、箔の市場調査と生産者と需要家をコーディネートすることによる商品開発を行う商品開発コーディネートなどの役割を担っているそうです。

黄金の輝きを放つテーブルと椅子、そして180枚の金箔を貼った金箔蓄音機

併設の小さなショップでは職員手作りの缶バッジを販売

ネコの足跡金箔シールは1枚380円で販売


 

かなざわしりつやすえきんぱくこうげいかん

金沢市立安江金箔工芸館

TEL:076-251-8950 住所:石川県金沢市東山1-3-10
時間:9時30分~17時(入館は~16時30分)
休日:火曜(祝日の場合は翌平日)、年末年始、展示替え期間
料金:入館310円
駐車場:なし