2023.05.20

加賀藩上級武家の資料が間近に~前田土佐守家資料館~

加賀藩上級武家の資料が間近に~前田土佐守家資料館~

ドラマチックな家の成り立ち

前田土佐守家は、加賀藩の藩祖、前田利家と正室まつ(利家の死後は芳春院と号します)の次男、前田利政を家祖とし、藩主前田家の分家筋に当たります。
ただ、利政自身は、関ヶ原の合戦に参戦しなかったため蟄居となり、能登の領地を没収され、亡くなるまで京都で隠遁生活を送りました。


利政を気遣った母の芳春院は、利政の長男である直之を、自ら養育。加賀藩前田家3代の利常に仕えさせたことから、同家は重きを置かれるようになり、藩主を補佐する重臣「年寄衆(としよりしゅう)」の一家として、幕末まで加賀藩の要職を務めることになりました。
同家は明治以降も存続し、現当主は利政から数えて14代目です。


この資料館は同家伝来の資料、約9000点を所蔵しています。
歴代当主が保存・整理に努めたので散逸が少なく、約6000点が古文書で、ほかは武具、書画、調度品など。前田土佐守家の家格の高さから資料には藩主の自筆書状も多く、加賀藩上級武士の暮らしを知る上で、貴重な資料が揃っています。

江戸時代や武家の生活に興味ある方には特におすすめのスポットです。

芳春院(前田利家の正室まつ)の座像(京都大徳寺芳春院所蔵)。上級武家の床の間を再現したもので、芳春院の座像は京都の大徳寺芳春院(芳春院が創建)にある画像をもとに制作したもの



芳春院(前田利家の正室まつ)の自筆書状

 

縁起良し!兎耳の兜など具足を常設

1階のメインは常設展示の第1展示室です。歴代当主の肖像画や古文書によって同家の歴史を紹介しています。

中央にあるのは、同館のシンボル「黒漆塗黒糸威二枚胴具足(くろうるしぬりくろいとおどしにまいどうぐそく)」。家祖、利政の具足です。

兜は兎の耳をかたどった変わり兜。「兎は前にしか進まない。後退しない」といわれ、勇猛果敢な戦国武将に好まれた縁起の良いモチーフです。
また、具足全体は黒一色に金銀の箔を配したクールなデザイン。利政のモダンなセンスがうかがわれます。

古文書の展示は、読み方や意味を解説したパンフレットが常備されているので、それと照らし合わせながらの見学がおすすめ。なかでも、「芳春院消息 ぼうがうば宛」が見もの。芳春院が孫の直之の病状について乳母に尋ねる手紙で、孫を案ずる祖母らしい心根が伝わってきます。

展示室の奥にあるのは庭園鑑賞室で、長町を流れる大野庄用水を引き込んで作庭された日本庭園を見ることができます。見学途中の休憩にどうぞ。

前田土佐守家の成立から明治維新までの歴史をひもとく第1展示室

「前田土佐守家」という家名は、従五位下を授かった6人の当主のうち、4人が土佐守を名乗ったことに由来。緋色の装束(袍)は五位の証し

日本庭園の見どころや金沢の主な庭園も紹介

企画展示で前田土佐守家を深掘り

2階には第2展示室があり、年4回、企画展示が行われます。各回、テーマを設けて、それに則した所蔵品が展示され、さまざまな角度から同家の資料を紹介しています。こちらにも企画展ごとにていねいな解説パンフレットが備えられています。


第2展示室前には、前田土佐守家下屋敷跡からの発掘物が常設展示されています。陶器などの日常品が多く、中には、当時京都で有名だった化粧水の瓶などもあり、昔の女性たちの生活が身近に感じられます。

取材時の企画展は「こもんじょ入門」。「織田信長黒印状」や「豊臣秀吉消息」などビッグネームの書状を見学

双六が楽しめるスペース。幕末に発売された、甲冑の着用方法が身につくユニークな双六

江戸時代の手紙の折り方を体験できるコーナー

 

来館記念にミュージアムグッズを

1階には、ショップやグラフィックパネル・映像コーナー、各種講座が行われる講義室もあります。エントランスにあるグラフィックパネルや映像では、加賀藩や前田土佐守家の成立を解説。最初に見ておくと、展示への理解がより深まります。

ショップでは図録の他、所蔵品をモチーフにしたグッズを販売。「黒漆塗黒糸威二枚胴具足」を再現できる「ペーパークラフト」1100円や、勝負どころのお守りになりそうな兎耳兜の甲冑シール20枚100円、色鮮やかな古地図「金沢城下絵図」600円、家紋の「梅鉢マスキングテープ」250円が人気です。

加賀藩と前田土佐守家の成立が分るグラフィックパネルと映像。3つの映像を全て見ると約20分

ディープな歴史ファンには、遊んで学べる「甲冑着用備え双六」や「加賀藩職制双六」各530円がおすすめ

 


-DATA-
 

前田土佐守家資料館

まえだとさのかみけしりょうかん

TEL:076-233-1561
住所:石川県金沢市片町2-10-17
時間:9時30分~17時(入館は~16時30分)
休日:月曜(祝日の場合は翌平日)年末年始、展示替え期間
料金:入館310円
駐車場:なし