2022.05.05

旬の食材とコクのある出汁、石川ならではの~和食~

旬の食材とコクのある出汁、石川ならではの~和食~

和の空間で素材を吟味した旬のご馳走を

2013年、「日本人の伝統的な食文化、和食」として、ユネスコの世界無形文化遺産に登録された『和食』。 世界遺産とは、1972年、ユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約」を基本に、建造物や遺跡、景観など優れたものに対し、世界文化遺産、世界自然遺産、世界複合遺産の3つに分類して登録されるものです。
その後、2003年にユネスコ総会で採択されたのが「無形文化遺産の保護に関する条約」で、こちらは伝統や表現、芸能、社会的習慣、儀式や祭礼行事、伝統工芸などの技術といった、無形のものに対して登録を行うユネスコ無形文化遺産です。今回の和食はこちら。ただ これらは、締結を行った国のみを対象に登録されるものです

そこで今回は、和食ならどこにも負けない高い技術をもった石川の和食店を紹介します。

数ある石川の和食からジャンルを問わず紹介

金沢の和食「加賀料理」については(2017.09.15)でも触れています。石川は食材が豊富であること、そして江戸時代から根付いた食べることの風習などがあり、要するに食いしん坊が多い県なのかな?と思う石川。とにかく和食は、和の店のしつらいなど、食べる前からわくわくさせてくれる風情や情緒がそこかしこにととのえられており、そんな空間で地味あふれる料理をいただくと五感がすべて喜ぶという幸せが得られます。おすすめ店は数え切れないほどあるのですが、会席料理にこだわらず、8つの店をご紹介します。

【金沢】割烹 一十百(かずとも)

金沢随一の繁華街・片町の中央通りに位置する創業45年の割烹。京都で修行した2代目が腕を振るい、日本海の幸や地元金沢の食材を生かした繊細な味わいの料理を提供。春は山菜、夏は岩がき、秋はレンコン、冬はカニなど地元の旬の食材を中心に、コース料理や一品料理がいただけます。自慢の「蓮蒸し」は加賀野菜を使うもので秋から春までの季節限定品。ほかに開店当初からの人気メニュー「豚角煮」や鮮度自慢の魚料理など、メニューも多彩です。
お楽しみは2代目が得意とする野菜のカービング。冬瓜やスイカ、リンゴなどの表面にさまざまな模様を細工し、誕生日などの特別な日のサプライズに喜ばれています。要望に応じて作ってくれるので、予約時に相談してみましょう。席はカウンターや個室のテーブル席のほか、お座敷などもあります。
tel.076-221-8057/石川県金沢市片町2-26-16/17:00~22:30/日曜、祝日休/予算:5,000円~

 

 

 

【金沢】御料理 貴船(きふね)

浅野川の河畔、主計町茶屋街の奥に位置する隠れ家のような佇まい。見た目で楽しめる料理もさることながら、大正建築のこぢんまりとした町家をリノベーションした空間はさらに雰囲気を盛り上げ、金沢で予約がとれない店の筆頭にあげられる人気店です。
折々の趣を料理一つひとつにみずみずしく描き出す技が秀逸で、加賀料理にヒントを得たものや、主人が食べ歩きなどから発見した食材や調理法などを果敢に導入。日本料理の基礎を踏まえた上で和食の域にとどまらない料理も登場し、その発想の豊かさに食通たちも魅了されます。献立は昼夜とも月替わりのコースのみ。部屋は座敷2室、テーブル8席で、昼夜とも4組限定で完全予約制。リピーターも多いため予約は取りにくいですが、待ってでも訪れたい1軒です。写真の料理は、6月15日〜7月14日の献立例。神社の例祭、茅の輪くぐりをイメージしています。
tel.076-220-6131/石川県金沢市彦三町1-9-69/11:30~13:30LO、17:30~20:00LO/水曜休/予算:昼5,500円~、夜9,240円~。

 

 

 

【金沢】かなざわ玉泉邸(ぎょくせんてい)

歴史ある名園、玉泉園内に立つ玉泉邸。玉泉園とは江戸初期に造られた加賀藩上級武士脇田家の上下二段式池泉回遊庭園で、作庭は特別名勝の兼六園より古いといわれます。園名は恩人である2代藩主の正室玉泉院にちなむもので、建物は江戸末期築の邸宅を利用した城下町の伝統が香り立つ佇まい。邸内のどの部屋からも名園を望むことができ、幽邃な趣に心が吸い寄せられます。
金沢の料亭で修業した料理長は、毎朝、近江町市場で最良の食材をえり抜き、時には農産物生産者のもとへ足を運びます。「地元のもの、旬のものを揃えています。とくに気を配っているのは、一つの料理に山の幸と海の幸とを組み合わせること」。金沢が積み重ねた情景と北陸の旬味がもてなす特別な時間が、まことひそやかに流れています。完全予約制。
tel.076-256-1542/石川県金沢市小将町8-3/12:00~14:30、18:00~22:00/月曜休(祝日は営業)、月2回火曜休/予算: 昼6,050円~、夜8,470円~。お部屋代1室3,630円(サービス料別途)

 

 

 

【金沢】御料理 まる山

2020年12月、にし茶屋街に開業早々、食に譲歩をしない金沢人をざわつかせている気鋭店。「日本料理は郷土料理。まず、土地の風土を理解することが大切」と語る店主はこの道30年近く。北陸の豊かな食材に惹かれ、割烹を営んでいた宮古島から移住した異色の人物です。料理は日本の正統。利尻昆布、鰹節、鮪節から引く出汁を料理に合わせて使い分け、地物について研鑽し、巡る季節へ敬意を払う店主。伊万里の渡邊心平や、伊賀の小島陽介など、現代作家や骨董品などの器遣いにもセンスが光ります。「北陸の魚介、野菜、米を使うのは本当に楽しい。金沢というカラーを出していきたい」と言い、『まる山らしさ』を美しく描きます。
にし茶屋街の通り沿い、行灯看板を掲げたビルの2階にあり、場所を知らないと見逃してしまいそうです。完全予約制。
tel.076-256-3438/石川県金沢市野町2-25-24 2階/12:00~(昼は土・日曜のみ営業)、18:00~20:30LI/月曜休、ほか臨時休業あり/予算:夜おまかせ(11品)9,900円~、ハーフコース(4品)+お好み1品6,000円/昼はハーフコース(5品)6,000円のみ

 

 

 

【金沢】麩料理 宮田 鈴庵(すずあん)

金沢の郷土料理に使われるすだれ麩や車麩、小花など愛らしい小さな色形の焼麩、お餅のようにもっちりとした生麩など、多彩な麩を製造販売する宮田。材料に北海道産小麦と国産餅粉を使って手作りする、こだわりの自社製麩を生かした懐石料理を楽しめるのが、ここ鈴庵です。
加賀群青壁の座敷など金沢らしい情緒ある古民家で味わえるのは、生麩の刺身や生麩のフライ、田楽、揚げ出し、車麩の巣ごもり、麩のデザートなどバリエーションも豊か。麩の料理方法がこんなにあるとは目からウロコ、料理を盛る九谷焼の器もステキで、料理共々楽しめます。麩は低カロリーで高タンパクな食品。江戸時代は修行僧などの貴重な栄養源だったそうで、健康にも良さそうです。料理は前日までの予約制で、小さな子ども連れの方は遠慮いただいてるとのこと。
tel.076-252-6262/石川県金沢市東山3-16-8/11:30~15:00/水曜休、毎月最終日曜休/予算:3,300円~

 

 

 

【金沢】おでん 若葉

金沢には、夏でもおでんが食べられる通年営業のおでん専門店が点在。最近では「金沢おでん」として観光客にも大人気で、金沢駅や繁華街片町周辺のおでん店には長い行列が続いています。金沢おでんの特長は、昆布や魚介などで取る上品で旨みのあるあっさりダシとおでんダネの豊富さです。
おすすめの若葉は1953年の創業。繁華街から少し離れた場所に位置し、周辺は病院や大学、住宅地です。店内はコの字カウンターと小上がり座敷があり、サラリーマンやOLからファミリーまで、さまざまな層が通う人気店です。大根や里芋、いわしつみれ、タコなどおでんダネは30種以上。串刺しの豚肉に特製味噌とたっぷりの刻みネギをのせた名物のどて焼きは酒によく合う一品。〆には茶めしという客も少なくなく、昔と変わらぬおでんは、鍋を持って買いにくる客も多いそうです。
tel.076-231-1876/石川県金沢市石引2-7-11/17:00~22:00LO/月・火曜休/予算:2,500円~

 

 

 

【七尾】一本杉川嶋

店主の川嶋さんは大阪や京都で茶懐石、出汁、日本酒、接客など日本料理を学び尽くし、2020年7月に故郷の七尾に開業。一年足らずでミシュラン一ツ星とグリーンスターを獲得。『能登』を駆使した技量が冴え渡ります。
「手をかけ過ぎないシンプルな料理が一番だと思います」。そんな川嶋さんが第一とするのは最上の出汁を引くこと。特注の鰹節や昆布、中島町に湧く超軟水を使う出汁を、コースの始まりにお客にテイスティングしていただきます。「もう一つ、思い入れが強いのはお米。中能登の棚田と能登島の自然栽培米を使っています。中能登では田植え、稲刈り、はざ干しを農家さんと共に作業します」。妥協のない姿勢は料理、器、内装など万事に貫かれています。完全予約制。写真の料理は甘鯛の真薯と、棚田米を直前に精米して土鍋で炊くご飯。
tel.0767-58-3251/石川県七尾市一本杉町32-1/18:30一斉スタート、昼は水曜のみ営業で12:00一斉スタート/不定休/予算:夜季節のおまかせコース1万8,150円~/ 水曜昼8,085円~

 

 

 

【七尾】幸寿し本店

「日本海の生け簀」とか「魚の宝庫」とかいわれる富山湾や七尾湾。そこに面した七尾市は、県内有数の魚介が揚がる港をもち、市内にはその日水揚げされたばかりのネタを提供する寿司店が点在。能登や金沢はもちろん、県内外からの寿司ファンが押し寄せています。
なかでもの人気店、幸寿し本店では目利き上手な店主がこだわって仕入れているため、新鮮なネタがケースに並びます。丁寧に仕込みをしたネタを、煮切り醤油をひいたり、能登産の塩や柚子をふるなど、一つひとつバランスよく工夫を重ねており、七尾山間部で育つ旨みのあるコシヒカリのシャリとの相性も抜群。小ぶりでやや丸いかたちの丹精な握りがすっと口中におさまります。アカニシ貝をはじめ、シャコやトリガイ、冬の2カ月しか味わえない香箱ガニなど季節ネタは要チェックです。混み合うため予約必須。
tel.0767-53-1274/石川県七尾市相生町30-1/11:30~14:00、17:00~20:00(ネタがなくなり次第終了)/月曜休/予算:地物主体のおまかせにぎり(みそ汁付)12貫3,850円