近年まで麺文化がなかった石川
「富山のラーメン、石川のうどん、福井のそば」と、30年ほど前までは観光ガイドブックでこう取り上げられていた北陸の麺文化。当時は確かに富山のラーメン、福井のそばはありましたが、そもそも石川には麺文化がなく、ごろ合わせにうどんになっていた感もあるようです。石川、なかでも金沢は、江戸時代には藩主前田家代々が美食家であったため、麺類よりも加賀料理などの郷土料理が発達。また金沢平野は米どころでもありました。昭和期では麺類は町の食堂でゆで麺の麺類を食べるのが常でしたが、金沢に唯一、「砂場」というそばの店があり、大人が通っていたのを覚えています。
そんな中、金沢に本格派そばの風を吹かせた「四季の庵」。この頃から脱サラなどで手打ち蕎麦を始める店が増え始め、自然豊かな白山麓はそば栽培が盛んなうえ、そば街道といわれるほどそば店が点在。そのかげにはそばの師匠が何人かいて、直伝で学んでいた時代です。
2021年現在、白山麓ばかりではなく県内各所に古民家を利用した手打ちそばの店があり、店主が学んだ地も異なりそれぞれ個性的なこだわりのそばを楽しめるようになりました。筆者も以前はそばに興味がなかったものの、30年前に取材で、本物の美味しい手打ちそばを食べて目からウロコ。そばってこんなに味わいが深かったのかと、その後食べ歩いたのでした。
白山麓の鳥越地区では9月になると白い小さな可憐なそばの花が咲き、一面真っ白に。この風景も楽しみたいですね。
※「砂場」、「四季の庵」とも閉店しています。
金沢の手打ちそば文化を盛り上げてくれた四季の庵のそば。長野のそばが基本で野沢菜が添えられていた
石川のおすすめ、手打ち蕎麦処8選
いよいよ新そばの季節。 新そばが持つ甘い香りと強い旨みが体中にしみわたる。 至福の一枚を味わいに出かけてみませんか。 ※ほとんどのそば店は、麺がなくなり次第終了となります。あらかじめ営業時間等を確認してからお出かけください。