2020.05.20

古代ロマンを訪ねる ~石川の古墳巡り~

古代ロマンを訪ねる ~石川の古墳巡り~

今から1500年以上前、古墳時代の遺構

2019年7月、ユネスコの世界遺産に大阪府堺市の「百舌鳥・古市古墳群」が登録されました。これは世界最大級の墳墓である仁徳天皇陵古墳をはじめ、44基が含まれてます。この時代は日本各地にも数々の墳墓がつくられ、石川でもかなりの数が見つかっています。西暦250年ごろ~600年ごろまでの古墳時代につくられた墳墓は、大きく土で盛り上げてあり、カタチは主に、前方後円墳、前方後方墳、円墳、方墳の4つに分けられます。石川県内には、発掘された後、歴史公園として整備された古墳も多数点在していますので、古代に思いを馳せて古墳巡りを楽しんでみてはいかがでしょう。 実際取材をしてみると、古墳は山の中だったり、人里離れた箇所などにあること、案内看板が少ないなど、現地にたどり着くまでに手間取ったこともありましたが、古墳周辺はほとんどが整備されていました。近くまでアクセスしたら、地元の人に尋ねるのもいいでしょう。

石川の古墳巡り8選

◇雨の宮古墳群(あめのみやこふんぐん)

石川県では比較的大型の古墳で、国指定史跡。4世紀中頃~5世紀初めにかけて、標高188mの眉丈山山頂に築かれたもので、大小36基の古墳が並びます。最も高い場所に位置する1号墳は、墳丘の長さが約64mの前方後方墳。1号墳と対峙するように並ぶ2号墳は、墳丘の長さが約65mの前方後円墳です。埋葬されていた人物の特定はできていませんが、能登全体を支配していた権力者であったと推測されています。周辺は古墳公園として整備されています。墳墓の上に登ることができ、周囲の山々や農村風景を眺めながら、太古に思いを馳せるのもいいですね。
駐車場横には資料館の雨の宮能登王墓の館(9時~17時、入館200円、火曜休、冬期休館)もあります。

●石川県鹿島郡中能登町西馬場7部12/tel.0767-72-2202(雨の宮能登王墓の館)

◇院内勅使塚古墳(いんないちょくしづかこふん)

古墳時代末期につくられた横穴式石室の方墳1基で、二段築成型。一辺約23m、高さ約3.7mあり、横穴式の石室の内部をのぞき見ることができます。この石室の天井を形成する石は巨大で、古代人の知恵に脱帽です。かつては墳裾に沿って幅約6m、深さ約1.8mの濠が巡らされていたそうですが、今はほんの一部が復原されているのみでした。埋葬されたのは、この地域の豪族能登臣に関係する人物とみられています。このあたりは能登の中心として栄えたところで、古墳があちこちに点在しているそうです。JR七尾線徳田駅から約130m、田園地帯の集落内に位置しており、畑の横にあるので道路からも見やすく探しやすい古墳でした。

●石川県七尾市下町戌部21-2

◇須曽蝦夷穴古墳(すそえぞあなこふん)

日本海に面した七尾湾にぽっかり浮かぶように横たわる能登島。周囲約72kmの小さな島にある古墳で、国指定史跡。古墳時代末期に築かれたものと推測され、有力者の墓とみられています。駐車場に停めて約160m、七尾湾を見下ろす風光明媚な丘に墳墓があります。一辺が約18mの方墳で、海に向かって横穴式石室が1つの墳墓に2つ並んで築かれています。横幅が広い奥室やアーチを描く天井から推測されることは、朝鮮半島の高句麗式墳墓に似ているとのことです。この七尾エリアの歴史や文化、祭りなどを紹介する、のと里山里海ミュージアム(tel.0767-57-5100、9時~17時、入館無料、火曜休、七尾市国分町亥1)を訪れれば、その時代背景を探ることができるかもしれません。

●石川県七尾市能登島須曽町タ部21-5/tel.0767-53-8437(七尾市教育委員会)

◇散田金谷古墳(さんでんかなやこふん)

子浦川を望む丘陵地、桜の里・古墳公園は能登有数の桜の名所として知られています。この一帯には散田金谷古墳と石坂鍋山古墳群とがあり、整備された国指定史跡の散田金谷古墳を見ることができます。この古墳は6世紀後半につくられたと考えられ、直径20m前後の円墳で高さは約3.5m。横穴式石室があり、内部は金網の外から覗くことはできますが、中に入るときは事前に宝達志水町文化財室に連絡すれば開けてくれるそうです。すぐそばには、日帰り専用の温泉施設「古墳の湯」があり、古墳見学、公園散策、温泉入浴と1日たっぷり楽しめそうです。

●石川県羽咋郡宝達志水町散田/tel.0767-28-5180(宝達志水町教育委員会生涯学習課文化財室)

◇おまる塚・びわ塚古墳

金沢市郊外にも古墳がありました。田園に囲まれた平野部、比較的新しい住宅地の二塚エリアにあり、この2つの塚があったことから地名が二塚になったそうです。このあたりにはまだいくつかの古墳があったそうなのですが、発掘されて整備されたのがこれらで、平成10年に金沢市指定史跡になりました。おまる塚古墳(写真)は、金沢市北塚町の宇佐神社近く、野原の中にある5世紀後半~6世紀前半の円墳です。南北23m、東西19m、高さ4.5mとこんもりした丘になっています。また、びわ塚古墳は、金沢市南塚町にある4~5世紀の円墳で、南北20m、東西16m、高さは1.5mです。高さも低く気づきにくいですが、大きなクロマツの木2本が目印です。どちらも石室などは見あたりませんでしたが、当時の権力者の墓と推測されています。

◇河田山古墳群(こうだやまこふんぐん)

かつて河田山と呼ばれていた丘陵地の団地造成に伴い発掘された古墳群。古墳時代の4世紀~7世紀にかけてつくられ古墳群で、前方後円墳2基、前方後方墳2基、方墳35基、円墳21基などの60基以上から形成されています。整備された古墳公園には12号墳の石室を移築しており、横穴式石室と復元された墳丘を見ることができます。また、河田山古墳群史跡資料館(10時~16時、入館無料、水曜休、冬期休館)の中央には、飛鳥時代につくられたという河田山33号墳横穴式石室発見当時の状態で再現展示しており、貴重な古墳の中を見ることができます。ほかにパネル展示や出土品など、古墳についてとても分かりやすく解説しているので、ぜひ入館を。

●石川県小松市国府台3-64/tel.0761-47-4533(河田山古墳群史跡資料館)

◇和田山古墳群(わだやまこふんぐん)

能美市は古墳の宝庫で、寺井山、和田山、末寺山、秋常山、西山の5つの古墳群があります。そのひとつ3世紀後半~6世紀後半にかけてつくられた和田山古墳群は、昭和26年に古墳群の中で初めて調査を実施されたものです。小高い丘に前方後円墳1基と円墳13基、方墳2基が並び、弥生時代の高床式倉庫跡なども見つかっています。また、隣り合って末寺山古墳群があり、一帯を史跡公園として整備。それらを巡る一周約1200mの散策路が設けられています。2020年秋には、史跡公園のすぐそばに能美市立博物館がオープン。能美古墳群の出土品や内容をはじめ、能美の自然や歴史などを展示紹介します。

●石川県能美市和田町/tel.0761-58-6103(能美市立歴史民俗資料館)※2020年秋以降の問い合わせは能美市立博物館へ

◇秋常山古墳群(あきつねやまこふんぐん)

昭和59年に発見された秋常山古墳群は能美古墳群のひとつで、丘陵地に2つの大きな古墳が並びます。平成4年から発掘調査が始まり、整備され現在の姿になったのは平成23年でした。前方後円墳の1号墳は最大高さ約20m、全長約140mもの大きなもので、石川県最大級の大きさです。4世紀後半ごろにつくられたと考えられています。2号墳は東西約32.5m、南北約27m、最大高さ約4.8mの方墳で5世紀中頃に築かれたものだそうです。1・2号墳とも古墳の上まで登ることができ、周辺の農村風景をながめることができます。2号墳では、調査した様子を再現した埋葬施設の見学やパネル展示をする部屋を公開しています。

●石川県能美市秋常町ヨ2-2/tel.0761-58-6103(能美市立歴史民俗資料館)※2020年秋以降の問い合わせは能美市立博物館へ