2020.01.20

後世に残したい、石川の~日本遺産~を紹介

後世に残したい、石川の~日本遺産~を紹介

貴重な歴史遺産を守っていきたい

文化庁が平成27年(2015)から認定を始めた「日本遺産」。
基本理念は、地域の歴史的魅力や特色があり、日本の文化や伝統を持ち合わせており、かつそのストーリー性があること。これを「日本遺産(Japan Heritage)」として認定する、というものです。
石川県には、各地に残されている貴重な歴史遺産があり、これらが続々と認定されています。


石川県の「日本遺産」認定年度とストーリー

●平成27年度認定
灯り舞う半島 能登 ~熱狂のキリコ祭り~(石川県、七尾市、輪島市、珠洲市、志賀町、穴水町、能登町)認定

●平成28年度認定
「珠玉と歩む物語」小松 ~時の流れの中で磨き上げた石の文化~(小松市)認定

●平成29年度認定
荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間 ~北前船寄港地・船主集落~(加賀市含む1道6県11市町)認定

4●平成30年度認定
荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間 ~北前船寄港地・船主集落~(平成29年度認定)に輪島市、小松市を含む27市町が追加(計1道2府12県38市町)

●令和元年度認定
荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間 ~北前船寄港地・船主集落~(平成29年度認定)に金沢市を含む7市町が追加(計1道2府13県45市町)

時代は変わっても、日本の心を受け継ぐ人がいる

今回は日本遺産に認定された県内の観光情報をご紹介します。日本遺産の認定は、年1回、文化庁が都道府県教育委員会を通じて募集を行い、市町村が申請し、審査を経たあと認定されるものです。日本の魅力を十分に備えた石川の歴史遺産を訪ねてみましょう。

■ 能登半島の「キリコ祭り」

能登半島の夏がさらに熱くなる祭り、キリコ祭り。7月~9月にかけて能登の各地、小さなものを含めると100カ所ほどで行われ、五穀豊穣や無病息災を願います。特徴は神輿を先導するキリコと呼ばれる、高さ数m~15mもの大きな灯り(奉燈)が担ぎ出されること。夜には、高さ10mほどの大松明に火が放たれ、その周囲をキリコが走り回り乱舞。大松明が倒れると、燃えさかる火の中を松明の先に刺さっていた青竹を奪い合うなど、エキサイティングな祭りとして知られています。

キリコ祭りの皮切りは、7月第1金・土曜開催の能登町あばれ祭り

8月14・15日開催、穴水の沖波大漁祭り

9月第2土曜に行われる珠洲市・寺家(じけ)キリコ祭り

■ 小松市の「石の文化」

小松市は、およそ2300年前の弥生時代から装飾品として使われていた碧玉(へきぎょく)やメノウ、水晶などの産出地。国内では碧玉を産出する地域が少なかったといわれ、そのひとつが小松市でした。そのほかの石の産出も多く、九谷焼の陶石をはじめ、石蔵や石塀に使われる凝灰岩などを産出してきました。滝ヶ原地区の石切場や小松市観音下(かながそ)の石切場があり、観音下の石は国会議事堂にも使われたそうです。石切場の跡や滝ヶ原石を使った「滝ヶ原アーチ型石橋群」は今も見ることができます。

滝ケ原アーチ石橋群のひとつ西山橋は小松市滝ヶ原町にある

古代遺跡のような滝ケ原の石切り場跡。緑色凝灰岩が産出されていた

江戸後期に小松市花坂地区で発見された陶石が九谷焼の原料に

■ 加賀市橋立の「北前船の寄港地」

江戸中期から明治中期にかけて、石川県各地の北前船寄港地では、大量の商品の売買で繁栄。船主たちは巨万の富を築いたそうです。加賀市橋立の港も北前船で栄え、冨を蓄えた豪壮な屋敷など、往時の面影をとどめた船主集落が残っています。明治9年(1876)に建てられた酒谷長兵衛家は「北前船の里資料館」として公開/●加賀市橋立町イ乙1-1、入館350円。また、酒谷長一郎家は屋敷と庭園を「北前船主屋敷蔵六園」として公開しています。/●加賀市橋立町ラ47、入館400円。

江戸時代から明治中期までの北前船に関する資料を展示する北前船の里資料館

往時の姿がそのままに残る北前船主屋敷蔵六園は国登録重要文化財

橋立は1本路地に入っても、昔の面影が残る屋敷が連なっている

■ 輪島市黒島の「北前船の寄港地」

能登半島の西海岸(外浦)、門前町黒島に「旧角海家住宅」があります。典型的な廻船問屋の住宅であり、海に向かって細長く延びる黒瓦の住宅や蔵、倉庫などが日本美を感じさせます。高台にある居間からは日本海が見渡せ、船の出入りがひと目で見渡せる仕組みで、素早く荷揚げなどを行っていた姿が見えるようです。能登半島地震で大きな被害を受けましたが修復され、一般公開されています。/●輪島市門前町黒島ロ94、入館320円。

屋敷のすぐ裏手には日本海が広がっている

いつでもどこでも海が見えるような造りの屋敷

黒島の町並みは国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている

■ 金沢市の金石・大野「北前船の寄港地」

金沢市の日本海沿いにあり、北前船の寄港地として栄えた金石・大野地区。かつてこのエリアに荷揚げされた物資は、金沢中心部・金沢城の城下町に運ばれ、その街道となった道は金石往還(かないわおうかん)と呼ばれ賑わいをみせていました。寄港地である金石・大野は、豪壮な船主屋敷のほか、北前船によって大豆を仕入れて醤油・味噌の産地として栄え、その歴史的な町並みは金沢市のこまちなみ保存建造物にも指定されています。また、この地域には北前船で活躍した銭屋五兵衛という人物もおり、彼の一生を紹介する「銭屋五兵衛記念館」を訪ねるのもいいですね。/●金沢市金石本町ロ55、入館500円。

醤油や味噌を製造する工場が並ぶ大野エリア

北前船で運ばれた原料を小舟で運ぶための大野の水路

大野・金石には豪商の面影が残る屋敷跡が点在する