金沢のまちづくりの源流、谷口吉郎氏
近年、建築めぐりを旅のテーマに金沢を訪れる人が増えています。注目を集めているのは金沢21世紀美術館や鈴木大拙館、金沢海みらい図書館といったモダンで斬新な建築。しかし金沢のまちの魅力は、こうした現代建築だけではありません。金沢が建築のまちとして魅力的であるのは、伝統的な建築や町並みが大切に保存されつつ、そこに新しさが上書きされてうまく共存している点にあります。成巽閣や尾山神社といった加賀藩前田家ゆかりの建築物をはじめ、情緒豊かな茶屋街、城下町の歴史を伝える武家屋敷跡など、あちらこちらに点在する歴史の記憶が、このまちの豊かさと奥深さを感じさせてくるのです。
こうした金沢のまちづくりの礎を築いたのが、東宮御所などを設計した金沢市出身の建築家・谷口吉郎氏です。彼は伝統的な町並みを保存しながら新しい開発を進められるように「金沢市伝統環境保存条例」制定に尽力し、現在のような新旧の建築や文化がまるでモザイクのように混在する美しいまちへと発展するきっかけを作りました。