ノスタルジックな路地裏散策も楽しみ
穏やかな流れから“女川”と称される浅野川に沿って、出格子が美しい茶屋建築が立ち並ぶ一画があります。浅野川大橋から中の橋にかけての一帯が主計町茶屋街。“かずえまち”と読みます。ひがし、にしと並ぶ金沢三茶屋街のひとつで、明治に入ってから茶屋街が形成されました。規模は小さいものの、浅野川の流れと昔ながらの趣深い町並みの調和が、訪れる人に深い印象を与えてくれます。
主計町という町名は加賀藩士・富田主計の屋敷があったことに由来しますが、実はその町名がかつて失われたことがあります。昭和45年(1970)、住居表示に関する法律によって主計町から尾張町2丁目へと変更されました。その後、地元住民らの強い要望によって平成11年(1999)に全国で初めて旧町名復活を果たし、全国に広がる旧町名復活運動のモデルとなったのです。
現在の主計町茶屋街には4軒のお茶屋があり、一帯は重要伝統的建造物群保存地区にも指定されています。
主計町のまち歩きの面白さは、明と暗のコントラストにあります。陽光に照らされたみずみずしい川沿いから路地裏へと入ると、雰囲気は一変。入り組んだ小路に格子戸の町家がひっそりと軒を連ねる界隈は昼間でも薄暗く、時折漏れ聞こえる三味線の音が、非日常感を醸し出します。