2019.09.20

浅野川の流れを望む、艶やかな主計町茶屋街

浅野川の流れを望む、艶やかな主計町茶屋街

ノスタルジックな路地裏散策も楽しみ

 穏やかな流れから“女川”と称される浅野川に沿って、出格子が美しい茶屋建築が立ち並ぶ一画があります。浅野川大橋から中の橋にかけての一帯が主計町茶屋街。“かずえまち”と読みます。ひがし、にしと並ぶ金沢三茶屋街のひとつで、明治に入ってから茶屋街が形成されました。規模は小さいものの、浅野川の流れと昔ながらの趣深い町並みの調和が、訪れる人に深い印象を与えてくれます。

 主計町という町名は加賀藩士・富田主計の屋敷があったことに由来しますが、実はその町名がかつて失われたことがあります。昭和45年(1970)、住居表示に関する法律によって主計町から尾張町2丁目へと変更されました。その後、地元住民らの強い要望によって平成11年(1999)に全国で初めて旧町名復活を果たし、全国に広がる旧町名復活運動のモデルとなったのです。

 現在の主計町茶屋街には4軒のお茶屋があり、一帯は重要伝統的建造物群保存地区にも指定されています。

 主計町のまち歩きの面白さは、明と暗のコントラストにあります。陽光に照らされたみずみずしい川沿いから路地裏へと入ると、雰囲気は一変。入り組んだ小路に格子戸の町家がひっそりと軒を連ねる界隈は昼間でも薄暗く、時折漏れ聞こえる三味線の音が、非日常感を醸し出します。

主計町茶屋街のスポット8選

 艶やかで美しい主計町茶屋街に点在する料亭やカフェ、ギャラリーなど、ぜひ立ち寄りたいスポットをご紹介。看板は景観にあわせて控えめに掲げられているので、見逃さないようにして下さいね。

◆土家(つちや)

大正2年(1913)建築、金沢市の指定文化財となっている茶屋建築を、和の情緒豊かなカフェにリノベーション。木虫籠(きむすこ)とよばれる細格子やベンガラ色の壁など、かつてのお茶屋の華やかなりし頃の面影をよく残しています。2階は浅野川を望む座敷となっており、くつろいだ雰囲気でティータイムを過ごせます。注文前にはお茶とお菓子のおもてなしがあり、ほっとひと息。穏やかなマスターが淹れる土家スペシャルコーヒー500円を飲みながら、お茶屋の空間を堪能しましょう。

TEL:080-3748-4702
住所:金沢市主計町2-3
時間:10:00~17:00
休日:月・火曜(祝日の場合は営業)

◆御料理 貴船(おりょうり きふね)

浅野川に面した町家を改装した落ち着いたたたずまい。2008年に開店し、金沢の四季を映す日本料理がまたたく間に評判となり、以来予約がとれない店として有名に。春はタケノコや山菜、冬はズワイガニや白子といった旬の食材を、丁寧な仕事と和食の枠を軽々と超えるアイデアや演出で楽しませてくれるほか、美しい盛り付けも魅力。昼5,500円~、夜9,240円~とも月替わりコースのみ。1日4組限定なので、早めの予約をおすすめします。

TEL:076-220-6131
住所:金沢市彦三町1-9-69
時間:11:30~13:30LO、17:30~20:30LO
休日:水曜、第1火曜

◆居酒屋 空海(いざかや くうかい)

かつてお茶屋だった建物を和モダンに改装。茶屋街という土地柄とは裏腹に、のれんをくぐれば気取らない雰囲気。どこか懐かしい空間が心地よく、地元の常連客や国内外の観光客で賑わいます。甘エビの出汁がふんわり香る玉子焼800円や、空海風鴨の治部煮、麻婆ソーメン900円など、加賀料理から無国籍料理までジャンルにとらわれない逸品や地酒も揃い、つい杯を重ねてしまいそう。夜の主計町茶屋街を、気軽に楽しむのにおすすめの一軒。

TEL:076-261-9112
住所:金沢市主計町3-10
時間:18:00~翌1:00(日曜、祝日は~24:00)
休日:木曜

◆なべ・割烹 太郎(たろう)

金沢で鍋といったらこの店。旬の魚介や新鮮な地物野菜を使った寄せ鍋ひとすじの老舗です。黄金色に澄んだ秘伝のダシは上品で味わい深く、食べ進めるうちに旨みが増して満足感もひとしおです。締めのおじやもまた絶品。女将さんや仲居さんが鍋を仕切ってくれるので、お客はおいしい鍋に専念するのみ。至れり尽くせりのひとときを楽しめます。6~8月は鍋料理がお休みで、コース料理となります。寄せ鍋5,692円、コース4,840円~とも要予約。

TEL:076-231-5152
住所:金沢市主計町2-7
時間:12:00~22:00(11~2月は16:00~)
休日:不定休

◆暗がり坂(くらがりざか)

久保市乙剣宮の境内から主計町茶屋街へと続く小さな坂。日中でもほの暗いことから“暗闇坂”とも呼ばれ、近年SNS映えスポットとしても話題に。深い陰影が非日常感を醸し、かつて商家の旦那衆がこの坂を通っていそいそと茶屋街へ通った頃の風景が目に浮かびます。坂の上には金沢三文豪のひとり、泉鏡花の生家があり、彼はこの坂を通って学校へ通ったといわれています。また近くには、作家・五木寛之氏が命名した「あかり坂」もあるので、あわせて訪ねてみましょう。

住所:金沢市主計町
時間:見学自由

◆主計町緑水苑(かずえまちりょくすいえん)

江戸時代、金沢城の防御のため、城を中心に土を盛り上げた土居や堀を巡らせた惣構(そうがまえ)が築かれました。慶長4年(1599)に造られた内惣構と、慶長15年(1610)に造られた外惣構が二重に巡らされ、今でも市街のあちらこちらでその痕跡を見ることができます。ここ、主計町緑水苑もそのひとつ。西内惣構の堀の水が浅野川に合流する地点にあり、発掘調査にもとづいて堀と土居を復元。庭園も整備され、春には見事なしだれ桜を見ることができます。

住所:金沢市主計町
時間:見学自由

◆木津屋旅館(きづやりょかん)

昭和初期に建てられた3階建てのお茶屋を改装した素泊まり旅館。浅野川に面した茶屋街の通り沿いにあり、ロケーションは抜群です。古き良き時代を思わせる昔ながらの木造建築は風情たっぷり。金沢らしいベンガラ色の部屋も人気があります。夜になると茶屋街はしっとりとした大人の雰囲気へと趣を変え、ライトアップされた中の橋など、日中とは異なる風景を楽しむのも一興。ひがし茶屋街や近江町市場、金沢城公園などにも近く、観光にも便利です。

TEL:076-221-3388
住所:金沢市主計町3-8
料金:1泊素泊まり5,500円~

◆かーふコレクション

金沢をこよなく愛し、国内外に多くのファンを持つアメリカ人版画家、クリフトン・カーフ氏の作品を展示販売するギャラリー。彼が生前、アトリエ兼自宅として使っていた建物を利用しており、ウサギをモチーフにした格子戸など彼自身がデザインした空間づくりにも注目を。版画や墨絵など約500点の遺作を保管しており、購入希望の場合は予約がベター。彼の作品にちなんだ手ぬぐいなど、ここでしか手に入らないオリジナルグッズもあります。

TEL:076-255-3928
住所:金沢市主計町3-19
時間:10:00~18:00
休日:火曜