堅牢優美な輪島塗を支える分業制
深みのある艶と温もりのある手触り。能登半島北端の輪島で作られる輪島塗は、漆器の最高峰ともいわれる伝統工芸品です。輪島塗の歴史は古く、現存する最古の輪島塗として知られているのは輪島市内にある重蔵神社本殿の朱塗扉。こちらは室町時代の作といわれています。江戸時代になると全国へと販路を拡げ、丈夫で長持ちする輪島塗の名声を高めていきました。輪島塗の特徴は堅牢さと優美さ。つまり実用性と美しさを兼ね備えた漆器であるということ。傷みやすい縁などを補強する「布着せ」、輪島市で産出する「地の粉」を用いた下地づくりによって強度を高め、漆を塗り重ねた美しい艶の上に沈金や蒔絵といった緻密な加飾をほどこします。こうした工程は木地、塗り、加飾など100を超え、それぞれ専門の職人による完全分業制となっていることも大きな特徴。専門性を高めることで品質を追求し、世界に誇る輪島塗を受け継いできたのです。
手間と時間をかけて作られ、使い込むほどに美しく、修理や塗り直しをしながら何代にもわたって使い続けられる輪島塗。近年はモダンな暮らしに合う作品も多くなってきました。輪島塗のふるさと輪島市にある「輪島塗会館」の1階は、市内60店舗あまりの漆器店が共同出店する輪島塗専門のショップで、各工房の漆器を見比べながら選ぶことができます。2階は資料展示室(入館300円)になっており、輪島塗の歴史をはじめ、制作道具や国指定有形民俗文化財の輪島塗作品も多数保有・展示しています。●石川県輪島市河井町24-55 ☏0768-22-2155