加賀藩のもとで花開いた工芸文化
金沢箔、九谷焼、輪島塗、加賀友禅などなど。世界に誇るこれらの工芸品は、すべて石川県が産地です。この地に受け継がれる伝統的工芸品は、国指定が10種類、県指定が6種類、そして希少伝統的工芸品が20種類の計36種類。これらは美術品としてだけではなく、日常の暮らしとともにあり、工芸王国・石川といわれるゆえんとなっています。 金沢を中心とする石川県各地では、なぜこれほど工芸が盛んなのでしょうか。そのルーツは加賀藩前田家が取り組んだ文化奨励策にあります。外様大名でありながら百万石の大藩を築いた前田家は、幕府の警戒を解くために文化振興へと力を注ぎました。加賀藩には武具を修復する「御細工所(おさいくしょ)」がありましたが、これを調度品の制作を行う工房へと転換し、江戸や京都から名工を招いて職人を育成。また、全国から工芸の見本を取り寄せて「百工比照(ひゃっこうひしょう)」とよばれるサンプル集を作ったことからも、加賀藩がいかに工芸に力を入れていたかが分かります。