2018.11.05

江戸時代からの面影が残る、風情ある小道を散策

江戸時代からの面影が残る、風情ある小道を散策

つい歩きたくなる心潤う金沢の小道 7選

金沢は第二次世界大戦の戦火にあわなかったため、江戸時代からの遺構がそこかしこに残ります。江戸時代につくられた古地図を頼りに町なかを散策できるほど、町割りの変化が少なく、情緒ある通りや狭い道などが点在しています。凜とした静けさが漂う寺院群の小道や緑たっぷりの小道など、今回は金沢風情あふれるとっておきの小道を紹介します。

美術の小径

美術館や博物館が集まる緑濃い金沢の文化エリアで、東京国立近代美術館工芸館も移転してくる本多町界隈。それぞれの施設を囲むように遊歩道が整備され、ゆったり散策しながらアートや文化に触れることができます。石川県立美術館の裏手から階段坂を下って金沢市立中村記念美術館へと続く遊歩道は美術の小径と呼ばれ、木々にうっそうと覆われた石段坂に沿って、辰巳用水から引かれたせせらぎが横を流れています。せせらぎの水は岩を伝って滝のように勢いよく流れ落ちて水しぶきをあげ、夏には葉っぱの間からの木漏れ日とともに涼を誘います。

歴史の小径

美術の小径に平行するように2017年3月に復元された遊歩道。金沢市立中村記念美術館側からは美術の小径と登り口が同じなため「入口はどこ?」となりがちですが、途中から二手に分かれています。もともとはこの地に広大な屋敷を構えていた加賀藩重臣本多家の上屋敷と中屋敷をつなぐ道で、主に本多家の当主や奥方が利用していたとか。つづら折りの階段の途中では、門跡や塀跡、石垣などの遺構を見学でき、家臣団のなかでも別格とされた本多家の威光を彷彿とさせます。利用時間は8時~17時(10~11月は~16時)で、街中とは思えない緑豊かな空間は気軽な散策におすすめです。

緑の小径

金沢市立中村記念美術館から、山裾を通って鈴木大拙館へと続く道が緑の小径です。美術館庭園にある茶室の横が入口で、ここからしばらくは整備された木道を通ります。自然の林を切り開いた静かな空間であり、金沢の中心地にいるのがうそのような静けさ。左手にはジャングル?(笑)のような森が広がります。鈴木大拙館に近づくにつれて、木道ではなく雑木林の中のゆるい山道のようになります。途中には、兼六園作庭の手本となったという松風閣庭園への連絡口(写真)があり、苔むした庭の美しさに心奪われます。時間があれば立ち寄りたい庭園です。

白鳥路

金沢城公園周辺を取り巻く遊歩道の一つで、大手堀とお堀通り(百間堀)を結ぶ小道が白鳥路と呼ばれています。江戸時代までは白鳥堀と名付けられた金沢城のお堀だったそうです。背の高い木々に覆われ、大きくくねくねと曲がった並木道が300mほど続いています。遊歩道には20体もの彫刻や銅像が並んでおり、さながら屋外美術館のよう。1点1点鑑賞しながら歩くのもいいですね。女性や男性の裸像のアートが多い中に、衣装をまとった金沢の三文豪、室生犀星、泉鏡花、徳田秋聲の像もあり、ここではちょっとホッとします(笑)。

心の道

卯辰山は金沢城から見て鬼門(北東)に当たるため、江戸時代に加賀藩がこの地に社寺を集めて厄除けとしました。卯辰山山麓寺院群には今も53の寺院や神社があり、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。心の道は寺院群のなかでも静明寺から小坂神社までの12の寺をつなぐ全長約2.6㎞の散策コース。迷路のように入り組んだ道や坂道や階段が連続するのは敵の侵入を遅らせるためだそう。山門のわらじが目を引く全性寺(写真)や泉鏡花の小説『縷紅新草』に登場する蓮昌寺、遠州流庭園がある心蓮社など、由緒ある社寺が多く、心があらわれる時間を過ごせます。

帰厚坂遊歩道(きころざか ゆうほどう)

浅野川に架かる天神橋のたもとに写真の案内碑があり、そこから卯辰山へと一直線に登る約270mの坂道です。江戸時代、卯辰山は城を見下ろすという理由で庶民の立ち入りが禁じられていましたが、14代藩主・前田慶寧が山腹に養生所(病院)や学校を建てて山を開放したことで「藩主の厚き徳に帰する」という意味を込めて命名されました。度重なる改修工事により現在の姿になりましたが、もともとの帰厚坂は案内碑の反対側にある草に覆われた25段の石段だそうで、そのあまりにもひっそりとした佇まいが郷愁を誘います。

静音の小径(しずねのこみち)

寺町寺院群にある静音の小径は、繁華街の片町から野町、寺町にかけての広範囲にわたります。毎週土曜には梵鐘が鳴り響き、情緒あふれる情景と音は「残したい日本の音風景100選」に選ばれるのも納得。重要伝統的建造物群保存地区に選定されていることから、忍者寺の名で知られる妙立寺やにし茶屋街などのメジャーな観光スポットがあるにもかかわらず昔ながらの情景が残されています。人骨地蔵尊がある大円寺やフレスコ壁画の本長寺など、個性的な寺が揃っており、時間をとってゆっくりと散策したいエリアです。