2018.07.20

静かなアートのような大人の空間、鈴木大拙館

禅を世界に知らしめた鈴木大拙

近年、海外で高い関心を集めているZEN「禅」。アップル社の創業者、スティーブ・ジョブズがZENを実践していたことでも大きな注目を集めました。
日本人の精神や文化に深く浸透する「禅」を世界に発信した第一人者が、金沢市出身の仏教哲学者・鈴木大拙です。禅に関する英文の著書を多く著し、ケンブリッジ大学やコロンビア大学といった名門大学で講義を行うなど世界に“禅”を広めました。

鈴木大拙の世界を具現化した美しい建築

禅や哲学と聞くと、身構えてしまう人もいるかもしれません。しかし、尻込みすることなく気軽に訪れていただきたいのが、鈴木大拙が生まれた本多町に立つ「鈴木大拙館」です。一般的な記念館や美術館と趣が異なるのは、展示や解説をあえて最小限にとどめ、来館者それぞれが自由に感じられる空間が用意されていること。ニューヨーク近代美術館などの設計で知られる世界的建築家・谷口吉生氏が手がけた建物は、装飾をそぎ落とし美しくシンプル。隅々まで緻密に計算された空間が印象的です。館を構成するのは玄関棟、展示棟、思索空間棟の3つの棟と、玄関の庭、露地の庭、水鏡の庭、という3つの庭。静かな水辺にたたずみ、四季の移ろいに耳をすませているうちに、自然と五感が研ぎ澄まされてゆくよう。何も難しいことを考えずとも、鈴木大拙の世界観を体感していることに気付くはずです。館の周囲には自然林に囲まれた散策路、緑の小径も整備されており、静かな大人の散策にちょうどいい。