2024.09.20

謎と驚きに満ちた通称「忍者寺」~妙立寺~

謎と驚きに満ちた通称「忍者寺」~妙立寺~

加賀藩の祈願所として出城の役割も

妙立寺は、寛永20年(1643)に、加賀藩前田家3代利常(としつね)が祈願所として金沢城近くから現地に移築建立しました。日蓮宗の寺院ですが、地元では「忍者寺」の名で知られています。その由来は、お堂の内部に、落とし穴や隠し階段など、敵をかく乱するさまざまな仕掛けが施され、まるで忍者屋敷のようだからなんです。実は、忍者とは全く関係ないのですが、その不思議さや奇抜さから、妙立寺は金沢観光屈指の人気スポットとなっています。
ではなぜ、そんな仕掛けがあるのでしょう。加賀藩は外様の大大名であり、前田利常が藩主の頃は、幕府との緊張状態が続いていました。城下の整備を進めた利常は、犀川の南に多くの寺院を配して寺町寺院群を形成し、城下の守りを固めました。同寺院群の中で、前田家の祈願所であった妙立寺は、出城であり、城下防衛のための寺だったのではないかと考えられています。

本堂屋根の突端にある望楼。当時は高価なギヤマンがはめ込まれており、遠く加賀平野を見渡せる見張り台だったとか

 

 

巧妙な仕掛けがいっぱいの堂内へ

外観はいたって普通の寺院ですが、内部は4層7階建て、部屋は23室、階段は29カ所もある複雑な造り。さらに階段や部屋が隠されていたり、途中に落とし穴があったりと、まるで迷路のよう。よって拝観はガイドさん引率のツアースタイルで、所要時間は約40分です。
まず、本堂で妙立寺の由緒由来の解説があり、その後、少人数のグループに分かれて回ります。一つ一つの仕掛けを丁寧に説明してもらえるので、その巧みさが良く分かり、参加者からは「へぇ~」「すごい!」と感嘆の声が上がります。また、茶室の設えや調度品からは、藩主を迎える格式の高さもうかがい知ることができました。 御朱印は拝観後に書き置きをいただけますが、数に限りがあるので日によって早めになくなることも。
拝観は要予約で、未就学児は入れません。また予約は電話で、本人が行うこととされています。事前にHPをチェックするのがおすすめです。 次に見どころのカラクリを写真で紹介しますが、伝わらないかもしれません。実際に見るとよく分かりますよ!

【本堂】

天蓋きらびやかな本堂。右手の中2階は藩主のための「隠し拝殿」で、非公式の参拝時は一般の参拝者から姿を隠して拝観した

【賽銭箱】

本堂正面の入り口、床に埋め込まれた珍しい形の賽銭箱、と思いきや、実は落とし穴。賽銭箱を取り外すと、2~3mの深さがある

【武士隠し】

本堂右奥にある武士の控えの間。ふすまに配された「すだれ張り」から、気づかれずに拝殿を見張ることができる

【落とし穴】

本堂左端の渡り廊下は床板を外すと階段状の落とし穴に。電気を消すと、当時と同じように真っ暗で、落とし穴に気づかない

【隠し階段】

物置の引き戸を開けて床板を外すと逃げ道の隠し階段がある。逆に、引き戸が閉まっていると床板がロックされているような状態で、外から侵入できない仕組み

【井戸】

庫裏の中心にある井戸。深さは約24m。中には横穴があり、金沢城までの抜け道だったと伝わる。実際には犀川手前で脱出したのでは、という説も

【巨大な梁】

長年、北陸の風雪から4層の建物を守ってきた巨大な天然木の梁。曲がっていることでより強度が増すという

【二枚戸】

一見、普通の二枚戸だが、一方は外へ、もう一方は別棟へと続く。外から戸を開けて敵が侵入してきても、その戸が自動的に別棟への通路を隠す造りになっている

【太鼓橋】

井戸の上にある太鼓橋。井戸を犀川に見立て、橋の上から水を汲み上げて、茶を点てたという風流な趣向

【武者溜まり】

警固の武士の控室。どこへでもすぐに駆け付けられるように、ふすまの奥に隠された階段など、5つの出入り口がある

【謁見の間】

最も格式の高い座敷。掛け軸は前田家14代前田慶寧(よしやす)の書で、香炉は加賀藩の支藩大聖寺藩ゆかりの品。奥には藩主のための茶室も

【霞の間】

隠された階段を上がると現れる茶室。富士山や満月のモチーフを取り入れ、違い棚をおぼろ雲、木彫を登り竜に見立てて、茶を楽しんだ

【明かり取り障子窓】

蹴込みが障子張りになっている階段。内側は下男部屋で障子に映る足影で外敵の侵入を見張っていた。写真は内部見学後に屋外から

【絵馬】

加賀藩前田家の紋章をかたどった梅鉢絵馬。前田家とゆかりの深い寺ならではのオリジナル絵馬。愛らしいわんこ絵馬も人気

妙立寺 みょうりゅうじ

TEL:076-241-0888
住所:石川県金沢市の町1-2-12
時間:9:00~16:00
休日:1月1日~2日、ほか法要日
料金:拝観1200円
駐車場:なし