巧みに縫い込むしなやかな文様
金糸や銀糸、色糸を巧みに縫い込んで絵画のように描く繊細な文様。絹の反物に施された加賀繡(かがぬい)は、室町時代に仏教の布教とともに京都から金沢に伝えられました。仏前の打敷や僧侶の袈裟などに加飾を施すためのものでした。 藩政期になると藩主の陣羽織や奥方、姫君の着物、袋物などに施されるようになり、やがては加賀藩の庇護も受けて定着。加賀繡の大きな特徴は、上品なグラデーションの「ぼかし繍」と立体的に表現する「肉入れ繍」です。一針一針の丁寧な積み重ねから生まれる美しい絵柄は華やかで優雅。女性の着物や半襟、帯などに艶やかさを添える装飾として欠かせない加賀繡は、今日まで連綿と受け継がれてきました。