2018.05.20

卯辰山のふもとで生まれ、自然主義文学を極めた徳田秋聲

卯辰山のふもとで生まれ、自然主義文学を極めた徳田秋聲

自然主義文学を代表する作家

「現代日本の文学者のうち、作家として、私の最も敬う人はと問われるならば、秋聲と答えるだろう」。川端康成は、金沢三文豪のひとり徳田秋聲をこう評しました。 明治4年(1871)、加賀藩士の子として浅野川そばの横山町に生まれた秋聲。一学年下には泉鏡花がおり、同じ小学校に通いました。尾崎紅葉の門下で小説家としてデビューし、のちに人間のあるがままの姿を描く自然主義文学の世界で頭角を現し、『黴』『あらくれ』などの名作を世に送り出しました。

秋聲が過ごした浅野川界隈

ひがし茶屋街を描いた『挿話』、自伝小説の『光を追うて』など金沢を舞台にした作品も多く、彼が幼少期を過ごした頃の風景がその中に描かれています。“女性を書かせれば神様”といわれたのも、茶屋街が身近であったことと無関係ではないのでしょう。 浅野川に架かる梅ノ橋のそばある「徳田秋聲記念館」では時計などの愛用品や自筆原稿、初版本といった貴重な品々が展示されており、分かりやすいパネルで秋聲の歩みや人脈などを知ることができます。館内や展望デッキから、美しく情緒あふれる浅野川を望むこともできます。記念館の前にある梅ノ橋から、下流の中の橋まで浅野川右岸にのびる小径は「秋聲のみち」。また秋聲がよく登ったという卯辰山の望湖台には土塀をかたどった徳田秋聲文学碑があり、これは日本で最初の文学碑といわれています。

東京に現存する旧宅書斎を再現したコーナー

作品に登場する女性を和紙人形で映像とともに展示

徳田秋聲記念館
とくだしゅうせいきねんかん
 
TEL:076-251-4300
住所:石川県金沢市東山1-19-1
開館:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館:無休(展示替え期間、年末年始は休館)
料金:入館300円