華やかな蒔絵を施した桐火鉢
かつて冬の暮らしに欠かせなかった火鉢。加賀百万石の城下町金沢では優美な蒔絵を施した桐火鉢が重宝され、嫁入り道具のひとつでもありました。 桐が使われたのは、ほかの木材に比べて発火点が高く耐火性があり、軽量で持ち運びが容易であるため。明治20年代になって、加賀蒔絵の大家・大垣昌訓(おおがきしょうくん)が桐火鉢に蒔絵を施す技法を編み出し、木目と蒔絵の美しさが調和した金沢の桐火鉢は全国で評判となりました。 桐といえば白木の箪笥などを思い浮かべますが、金沢の桐工芸は表面を焼いた黒い肌、美しく浮き出た木目を特徴としています。桐を焼くのは木目を際立たせ、汚れを目立ちにくく、蒔絵を引き立てるためだとか。