美しい幻想世界を描く作家
金沢の三文豪といえば泉鏡花、室生犀星、徳田秋聲。今回ご紹介するのは明治から昭和初期にかけて活躍し、小説家・中島敦をして“まことに言葉の魔術師。感情装飾の幻術者”と言わしめた泉鏡花。
その美しく幻想的な世界観は、時を経ても多くのファンを惹きつけてやみません。鏡花が生まれたのは明治6年(1873)のこと。父は彫金師、母は加賀藩お抱え大鼓師の娘で、この最愛の母は鏡花が9歳の時に亡くなりました。作品中にさまざまな美しい女性像が描かれるのは、亡き母への憧憬が原点であるためといわれています。尾崎紅葉に師事し、小説家としてデビューした鏡花は『義血侠血』や『高野聖』など数々の名作を世に送り出しました。