2018.01.20

天才とよばれた文豪、泉鏡花の独特の美意識に触れる。

天才とよばれた文豪、泉鏡花の独特の美意識に触れる。

美しい幻想世界を描く作家

金沢の三文豪といえば泉鏡花、室生犀星、徳田秋聲。今回ご紹介するのは明治から昭和初期にかけて活躍し、小説家・中島敦をして“まことに言葉の魔術師。感情装飾の幻術者”と言わしめた泉鏡花。

その美しく幻想的な世界観は、時を経ても多くのファンを惹きつけてやみません。鏡花が生まれたのは明治6年(1873)のこと。父は彫金師、母は加賀藩お抱え大鼓師の娘で、この最愛の母は鏡花が9歳の時に亡くなりました。作品中にさまざまな美しい女性像が描かれるのは、亡き母への憧憬が原点であるためといわれています。尾崎紅葉に師事し、小説家としてデビューした鏡花は『義血侠血』や『高野聖』など数々の名作を世に送り出しました。

泉鏡花記念館

鏡花ゆかりの地を訪ねて

浅野川に近い鏡花の生家跡に「泉鏡花記念館」があります。

館内には直筆原稿や遺品などが展示され、作品を再現するジオラマや音声などでも鏡花の美意識を味わうことができます。また美しいデザインの装丁も見逃せません。生家界隈の風景は『照葉狂言』に描かれており、遊び場だった久保市乙剣宮も“あそびなかまの暮ごとに集いしは、筋むかいなる県社乙剣の宮の境内なる御影石の鳥居のなかなり”と登場しています。

その境内を通り暗がり坂とよばれる階段を降りると、鏡花にちなんで照葉ざくらと名付けられた桜の木。主計町茶屋街を抜けると、『由縁の女』で女川と表現した浅野川が現れます。川沿いには鏡花のみちとよばれる散策路が整備されており、穏やかな流れと風情ある橋を眺めながら心地よい散策を楽しむことができます。滝の白糸で知られる『義血侠血』の舞台となったのは天神。河畔にはヒロインの滝の白糸像が静かにたたずんでいます。

泉鏡花記念館

泉鏡花記念館

いずみきょうかきねんかん
TEL:076-222-1025住所:石川県金沢市下新町2-3
開館:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館:無休(展示替え期間、年末年始は休館)
料金:入館300円