加賀藩主が愛した山あいの隠れ湯
金沢市中心部から車でおよそ30分。のどかな山あいに湯けむりを上げる「湯涌温泉」は、9軒の宿がたたずむ静かな温泉地です。開湯は今から1300年前、養老2年(718)のこと。一人の農夫が湯だまりで羽を休める白鷺を見つけたことが、この温泉の始まりだと伝えられています。かつて加賀藩主の湯治場だったという由緒ある湯涌温泉。大正時代には画家・竹久夢二が最愛の人、笠井彦乃とともに逗留するなど、多くの文人墨客に愛されてきました。豊かな自然の中にどこかノスタルジックな雰囲気を漂わせるのは、この温泉街に刻まれた美しい記憶のせいかもしれません。一方で近年、アニメ「花咲くいろは」の舞台となったことで新たな魅力も発揮しており、聖地巡礼に訪れるファンが絶えません。アニメの中で描かれた架空の祭り「ぼんぼり祭り」を実際に開催するなど、温泉街あげての地域おこしが話題を集めています。