地の利と歴史を背景に
金沢の食文化を象徴する「加賀料理」は、懐石料理を基本に郷土料理や慶事料理が加味され、伝統文化を融合し、料亭において開花しました。これを支えるのは季節の豊かな恵み。日本海に突き出た能登半島をはじめ北陸で揚がる海の幸、加賀や能登の野の幸、白山麓の山の幸です。こうした自然の利に歴史が大きく関わっています。 加賀藩祖前田利家をはじめ藩政初期の藩主たちは公家文化の京風を好みました。一方、江戸幕府への配慮から武家文化である江戸風もとり入れたため、京風と江戸風の食が共存するようになります。また藩政時代、城下では自宅に客を招く「およばれ」の慣習が根付き、賓客のもてなしの料理には九谷焼や金沢漆器など伝統工芸品が盛んに使われるようになったのです。 美食家たちが一目おく加賀料理は、芸術品のように色彩を放ち金沢の滋味にあふれています。