2022.12.20

加賀藩の中・上級武士の住居跡~長町武家屋敷跡~を歩く

加賀藩の中・上級武士の住居跡~長町武家屋敷跡~を歩く

身分の高い武士が住まいを構えた屋敷跡

尾張で活躍した前田利家が、織田信長に功績を認められ能登へ。さらに金沢に移り、加賀藩の礎を築きました。「長町武家屋敷跡」(ながまちぶけやしきあと)は、加賀藩前田家時代に加賀藩士の屋敷が立ち並んでいた界隈で、中級や上級の身分の高い武士が暮らしたエリア。犀川から引き込んだ大野庄用水が流れ、その水を屋敷にも回遊させ、庭園の曲水にも利用。屋敷の主人は風流な庭園を当たりまえのように眺めていたのでしょう。今も残る重厚な屋敷内には入ることができませんが、瓦屋根の土塀をめぐらせた狭い石畳の通りには往時の面影が残ります。敵が一気に攻め込まないように見通しの悪いクランク状の道や武者窓といった城下町ならではの工夫がされています。上級武士の立派な長屋門も残っていて、藩政時代にタイムスリップしたような気分に。今にも侍が現れそうな雰囲気です。 金沢駅からだとバスで約8分、香林坊下車、徒歩約5分でクランク状の屋敷跡に到着します。狭い通りを歩くと屋敷の前に置いた大きな石を発見することがあるかもしれません。これは「ごっぽ石」といって、冬の雪道で下駄の歯の間に詰まった雪を石に打ち付けて落とすためのものです。長町武家屋敷跡の散策は自由ですが、現在も屋敷内では普通の暮らしが営まれていますので、のぞき込んだり騒いだりしないように散策してください。

犀川から取水している大野庄用水。爽やかで涼しげに流れる街中のオアシス

土塀を雪や凍結から守るための「こも掛け」は冬の風物詩

武家屋敷跡界隈を歩いてみましょう!

武家屋敷跡の通りや大庄用水が流れる界隈には見どころやショップが点在しています。今回は6件紹介しますが、ほかにも食事処やカフェ、みやげショップなどがいくつかありますので、立ち寄ってみてください。


【鈴風舎★りんぷうしゃ】

まずは武家屋敷跡の通りの少し手前、路地に入ります。奥は行き止まりになる細い路地に佇む日本茶喫茶、鈴風舎に立ち寄ってみましょう。実家が金沢市内にある慶応3年(1876)創業の酒見銘茶店で、ずっとお茶と接してきた店主が営みます。喫茶では、無農薬の茶葉を使い店主自らが焙煎する加賀棒茶をはじめ、緑茶や抹茶などがあり、「グリーンティソーダ」や「豆乳抹茶ラテ」などで楽しめます。夏には「抹茶かき氷(練乳がけ)」400円も登場。茶畑にも出向いて農家さんとコミュニケーションを取ることもある店主。無農薬茶は販売量も限られていますが、鈴風舎ではそのお茶を淹れ、心の底までほっこりする時間が味わえます。

TEL:090-1392-4982
住所:金沢市長町1-3-10
時:11時~17時(変動あり)
休:金・土・日曜に不定期にオープン※InstagramやFacebookで「鈴風舎」確認を
駐車場:なし

抹茶ライムトニック(ノンアルコール)450円は爽やか

路地奥にある古民家をそのまま利用している


【武家屋敷跡 野村家】

石畳の武家屋敷跡を抜けて、大庄用水に架かる橋を渡り右折。80mほど歩くと右側にあるのが「武家屋敷跡 野村家」です。野村家は藩政時代に前田家に仕えた家臣で、11代にわたり加賀藩の重臣を歴任。その屋敷跡を公開しています。明治以降は住人も代わりましたが、門や土塀、曲水、名石などを配した庭園は藩政期の遺構です。現在の建物は、昭和初期に北前船主の豪邸の一部を移したもので、総ヒノキ造りの格天井や桐板張り床板など贅を凝らした造り。野村家代々の刀剣や鐙(あぶみ)など、貴重な資料を展示する鬼川文庫もあります。庭園を望む茶室では、お抹茶(干菓子付)をいただくことも可能。

TEL:076-221-3553
住所:金沢市長町1-3-32
時間:8時30分~17時30分(10月~3月は~16時30分)※入館は閉館の30分前まで
休日:1月1・2日、12月26・27日
料金:入館550円
駐車場:6台

錦鯉が泳ぐ曲水や古木などの庭園。2009年のミシュランガイドでは2ツ星に選ばれた名園

右奥に見える部屋が藩主を招いた際の上段の間で贅沢な造りになっている


【茶菓工房 たろう 鬼川店】

野村家に隣接する和菓子店。店の一角には甘味喫茶のスペースを設けてあり、窓に向かったカウンター席は野村家庭園に面しており、日本庭園を眺めながらお抹茶が楽しめます。白玉と大納言小豆粒あんの「白玉きな粉黒蜜掛け」800円や「珈琲とようかん」600円などがあります。 たろうは、和菓子店でありながらカカオやホワイトチョコレート、ピーナツバターを用いるなど、新感覚の創作菓子が人気を集めています。キュートでモダンな和菓子がそろい、パッケージも愛らしく、金沢みやげに最適。おすすめは、糸寒天を使った干菓子「もりの音」1本378円や、抹茶カステラとチョコようかんを重ねた「はなことたろう」5個入950円など。

TEL:076-223-2838
住所:金沢市長町1-3-32
時間:8時45分~16時30分LO(売店は~17時30分)
休日:無休(1月1・2日は休み)
駐車場:6台

手前が抹茶(上生菓子付き)700円、奥が抹茶ぜんざい800円

武家屋敷跡野村家の庭園を背にして立つ茶菓工房 たろう鬼川店


【菓ふぇMURAKAMI Nagaya-mon店】

生菓子から日持ちする菓子まで種類豊富な和菓子が揃う、明治44年(1911)創業の老舗、「和菓子村上」がプロデュース。売店の奥にカフェがあり、上生菓子と抹茶のセットや抹茶クリームパンケーキ、自家製あずきソフト、わらび餅などが人気。一番人気の米粉のパンケーキは、どら焼きの製法をアレンジした和菓子店ならではの一品です。メレンゲを加えて焼き上げることでしっとりフワフワの食感に仕上げており、口の中で繊細にほどけます。つややかに炊き上げた能登大納言小豆やバニラアイス、フレッシュフルーツなどのトッピングもうれしいですね。 みやげには、きなこと求肥餅に黒ゴマをまぶした「垣穂」6個入り1069円を。

TEL:076-264-4223
住所:金沢市長町2-3-32
時間:10時30分~16時30分LO(売店は9時15分~17時30分)
休日:水曜(売店は無休)
駐車場:なし

焼きたて、フワッフワ!抹茶クリームパンケーキ1100円は店舗限定メニュー

餡のおいしさに定評がある、和菓子村上の商品が揃う


【旧加賀藩士 高田家跡】

菓ふぇMURAKAMIから大野庄用水に沿って約100m。大きくどっしりと構える長屋門が目印。ここは、禄高550石の加賀藩の中級武士、高田家の住まい跡で、藩政時代の長屋門を修復しています。敷地内には池を配した池泉式回遊庭園が広がるほか、奉公人部屋や馬をつないでいた厩(うまや)なども再現され、内部には当時の中級武士や奉公人の暮らしの説明板もあります。池を配した庭園があるなんてかなり贅沢ですね。ここは見学が無料なので気軽に立ち寄れますし、ベンチもあるので一服もできます。

TEL:076-263-3640(金沢市足軽資料館)
住所:金沢市長町2-6-1
時間:9時30分~17時
休日:無休
料金:見学無料
駐車場:なし

身分が高い武士のみだけに建築が許される長屋門

仲間部屋(ちゅうげんべや)は奉公人の部屋、その横に厩がつながる


【金沢市足軽資料館】

高田家跡から大野庄用水に沿って100mほど進み右手。藩政時代、実際に足軽が暮らしていた清水家と高西家の2棟を移築し公開しています。身分の低い歩兵の足軽ですが、加賀藩では庭と座敷を備えた小さいながらも瀟洒な平屋の一戸建てに住んでいたようです。屋根は風で飛ばないように石を置いた板葺き。館内では生活用具や文献資料などを展示しており、当時の質素な暮らしぶりがうかがえます。こちらも見学は無料ですので、座敷に座って一服しながらゆっくり見てまわりましょう。

TEL:076-263-3640
住所:金沢市長町1-9-3
時間:9時30分~17時
休日:無休
料金:入館無料
駐車場:なし

足軽資料館「高西家」は平成6年(1994)まで住居として使われていた

高西家の内観。分かりやすい解説板があるので、往時の暮らしが垣間見える