身分の高い武士が住まいを構えた屋敷跡
尾張で活躍した前田利家が、織田信長に功績を認められ能登へ。さらに金沢に移り、加賀藩の礎を築きました。「長町武家屋敷跡」(ながまちぶけやしきあと)は、加賀藩前田家時代に加賀藩士の屋敷が立ち並んでいた界隈で、中級や上級の身分の高い武士が暮らしたエリア。犀川から引き込んだ大野庄用水が流れ、その水を屋敷にも回遊させ、庭園の曲水にも利用。屋敷の主人は風流な庭園を当たりまえのように眺めていたのでしょう。今も残る重厚な屋敷内には入ることができませんが、瓦屋根の土塀をめぐらせた狭い石畳の通りには往時の面影が残ります。敵が一気に攻め込まないように見通しの悪いクランク状の道や武者窓といった城下町ならではの工夫がされています。上級武士の立派な長屋門も残っていて、藩政時代にタイムスリップしたような気分に。今にも侍が現れそうな雰囲気です。 金沢駅からだとバスで約8分、香林坊下車、徒歩約5分でクランク状の屋敷跡に到着します。狭い通りを歩くと屋敷の前に置いた大きな石を発見することがあるかもしれません。これは「ごっぽ石」といって、冬の雪道で下駄の歯の間に詰まった雪を石に打ち付けて落とすためのものです。長町武家屋敷跡の散策は自由ですが、現在も屋敷内では普通の暮らしが営まれていますので、のぞき込んだり騒いだりしないように散策してください。
犀川から取水している大野庄用水。爽やかで涼しげに流れる街中のオアシス
土塀を雪や凍結から守るための「こも掛け」は冬の風物詩