加賀藩のプライドをかけた手仕事
金沢といえば加賀百万石。加賀藩主前田家は、外様大名なのに百万石を誇るお金持ちだったことから、幕府に警戒される存在でした。隙あらば改易を狙う幕府に対し、3代藩主前田利常は謀反を起こすつもりなどないことをアピールしようと、藩をあげて工芸を推奨しました。そのため、金沢には今も多くの伝統工芸が受け継がれています。
その一つが、金沢漆器(かなざわしっき)です。加賀藩が財力を惜しまず京や江戸から名工を招いたことで、京都の優雅な貴族文化と江戸の雄々しい武家文化が融合した金沢独自の漆器文化が誕生しました。京から招かれた五十嵐道甫(いがらしどうほ)や江戸から招かれた清水九兵衛(しみずくへい)らの巨匠が基礎を築き、代々の藩主のもとで大名好みのゴージャスな茶道具や調度品がつくられてきたのです。
藩の外交にも使われた金沢漆器の特長は、漆の生地に立体的な文様を描く加飾技術(かしょくぎじゅつ)にあります。漆を含ませた筆で絵を描き、金粉や銀粉をふんだんに使い、さらに漆をかけて研ぐことを繰り返す技は「加賀蒔絵(かがまきえ)」と呼ばれ、素人目にも見事な作品に圧倒されます。