2022.01.20

旧式の音源が懐かしくて新しい~金沢蓄音器館~

旧式の音源が懐かしくて新しい~金沢蓄音器館~

蓄音器が奏でる至福の音楽時間

ひがし茶屋街や近江町市場などの観光地にほど近い、尾張町の一角にたたずむちょっとレトロな雰囲気の建物。ここが金沢蓄音器館です。蓄音器は明治10年(1877)にアメリカでトーマス・エジソンが発明した音を再生する装置。エジソンの発明によって人類は初めて「音を再生する手段」を手に入れました。蓄音器は登場以後、瞬く間に人々の心をとらえ、さまざまなタイプの蓄音器が音楽とともに愛されてきました。実物を見たことがなくても映画やテレビドラマで蓄音器の姿を目にしたことのある方も多いでしょう。

多くの流行歌を生み出し、時代を彩ってきた蓄音器でしたが、アナログからよりよい音、長い演奏時間を求める時代の流れとともに昭和50年代には姿を消しつつありました。そのころ、金沢市で長年レコード店を営んできた故八日市屋浩志氏が、無造作に捨てられていた蓄音器に心を痛め、収集を始めたことが、今の金沢蓄音器館のルーツとなりました。現在は世界各地の蓄音器約600台、SPレコード約4万枚を収蔵する蓄音器専門のミュージアムとして、日本はもとより世界中からファンが訪れています。

日本屈指の蓄音器コレクションを展示

館内の順路は最上階の3階からスタートするのがお約束。このフロアには明治、大正、昭和の各時代に活躍した蓄音器が年代ごとに展示されています。木や鉄、紙など、音を発するラッパの素材によって音色が異なることを体験したり、手元のコンピュータで蓄音器の情報や技術を知ることで、より深く蓄音器の魅力にふれることができます。

また、フロアには書斎風のリスニングコーナーが設けられており、棚に並ぶLPレコードの視聴も可能です。気になる1枚を見つけたら、椅子に腰かけてゆったりと音楽を聴きながらリラックスしましょう。

国産蓄音器の第一号「ニッポノホン35号」をはじめ、ラッパがついた貴重な蓄音器が並ぶコーナー「蓄音機の森」

時間を気にせずノスタルジックな調べに耳を傾けたいリスニングコーナー

昭和時代に製造された蓄音器コーナー。年配の方が見入る姿が見られます

蓄音器の聴き比べ実演が人気

金沢蓄音器館の2階では、開館日の11時、14時、16時に時代や形の異なる蓄音器の聴き比べ実演が行われ、人気を呼んでいます。もともとSPレコードは聞くたびに溝が磨り減っていくため、蓄音器による再生を聴けるのはとても貴重な体験。レコード盤が自らの寿命を削って私たちに音楽を届けてくれているかと思うと感慨もひとしおです。まるで目の前で歌手が熱唱しているかのような臨場感や当時の情景が思い浮かぶやわらかな音色をぜひご自身の耳で確かめてください。
また、実演の合間に蓄音器の歴史や特徴、ちょっとしたウラ話などを盛り込んで説明してくれる解説も楽しく、実演目当てに訪れるリピーターが多いというのも納得です。

1台1台丁寧に手入れすることで今でも現役で音を奏でられる

100年以上も前の音を実際に自分の耳で聴く体験は格別

懐かしい時代のレコードを展示するコーナー

蓄音器から広がる音楽の世界に寄り添う

1階では、昭和2年(1927)に米国でつくられたクラシックなピアノが目を引きます。このピアノは紙ロールにより名ピアニストの指使いを再現してくれる優れものだそう。このフロアでは、月に数回テーマに沿ったSP盤鑑賞会やゲストを招いてのミニコンサートが開催されています。
さらに蓄音器関連のグッズや蓄音器で再生された名曲を収めたCDなどのグッズを販売するミュージアムショップも併設しており、来館記念にお気に入りを見つけてはいかがでしょうか。

寄贈された蓄音器やSPレコードを自ら修理し、私たちに紹介してくれる八日市屋典之館長は蓄音器の魅力を「CDや配信の音と違ってノイズはありますが、ホッとしてやさしい音です。目の前で演奏しているかのような迫力も感じられます。聴いているととてもリラックスできます」と語ります。
蓄音器は機械なのに「機」ではなく「器」の文字が使われているのは、音を盛る器だからという説があるように、金沢で器に盛られたごちそうのように味わい深い蓄音器の音楽に浸るのもおすすめです。

さまざまなジャンルの音楽イベントを開催。詳細は館ので確認できる

ふだん使いできるグッズから名盤CDまで、購入意欲をそそるグッズを販売

金沢蓄音器館の蓄音器が音源のCDも発売している

金沢蓄音器館

かなざわちくおんきかん

TEL:076-232-3066
住所:金沢市尾張町2-11-21
時間:10:00~17:30(入館は~17:00)
休日:火曜(祝日の場合は翌平日)、展示替え休館あり
料金:入館310円(特別展は別途)
駐車場:6台