2021.11.20

世界に紹介される一流グルメ~北陸のミシュラン~を訪ねて

世界に紹介される一流グルメ~北陸のミシュラン~を訪ねて

北陸は、食材も料理人もレベルが高い

日本海に面した北陸。当然、海からの贈り物である魚介が豊富で、日本海の魚は種類も多い。身の締まりもよく、海水に含む栄養素も高いため旨みのある魚介が自慢です。また、豊かな穀倉地帯では米や野菜が育まれ、白山連峰や立山連峰に抱かれた山懐では山菜や川魚、ジビエなど、山の恵みが盛りだくさんです。

料理人の中には、これらの食材に魅せられて北陸にやってきたという方も少なくありません。自ら食材を求めて漁港に出向き、または山に分け入ることもいとわず、ひたすら食と向き合う料理人たちが口を揃えて語るのは、やはり北陸の食材の美味しさです。

この良質な食材を、さらに見た目も麗しく仕上げてくれる料理店を紹介します。

たまには頑張っている自分にご褒美を!

素材の旨みを生かす料理もさることながら、料理人に惚れて通うことも多い、グルメ好きな筆者が独断と偏見で選んだ料理店を8つ紹介します。

石川・輪島 ★ 富成

金沢から車で約2時間半、輪島の米どころ町野地区に位置。「日本料理富成」は、のどかな里山の自然風景が広がる一画にある。この地は店主・冨成さんの父親が長年仕出し業を営んでいた場所。大阪の料理店や京都のホテルで修業を積んだ冨成さんが生まれた場所に戻り、懐石料理を始めたのは6年前になる。輪島の海の魚ばかりではなく、川蟹や川魚、山菜など滋味深い奥能登の食材を多くの人に味わってほしいと、自ら山に分け入り採取に出かける。それらが冨成さんの手塩にかけられ、器の中で生まれ変わる。料理は昼・夜とも4,500円、7,800円、1万3,200円の3コースで、自然食材に心を砕いた繊細な料理を味わえる。
また冨成さんは、自然の中で育まれる食材の危機を感じ、川の保全に取り組んでおり、自然環境の持続可能性を反映させるサステナブルガストロノミー(グリーンスター)にも選ばれている。昼・夜とも完全予約制。
tel.0768-32-0402/石川県輪島市町野町広江26-18/11:00~14:00、17:00~22:00/火曜休



石川・輪島 ★ ラトリエドゥノト

輪島朝市からほど近い距離にあるフレンチレストラン。外観は純和風で、輪島塗の塗師屋だった古民家を改装。店内も古民家の風情がただよい、中庭を見渡せる。オーナーシェフの池端さんは、大阪の有名店やフランス・ブルゴーニュのミシュランガイド三つ星店などで腕を磨き、故郷の輪島でレストランをオープンさせた。
食材は地元中心で、輪島の魚介や野菜をはじめ、自然農法にこだわる穴水のタンポポファームの仔牛の肉など、自らが納得したものを取り入れる。これらの食材の生産者のもとへ足を運ぶことも惜しまず、能登の厳選した食材をふんだんに使って見た目も麗しい料理に仕上げている。器には輪島塗も取り入れ、まさに能登フレンチの集大成。
自然環境の持続可能性を反映させるサステナブルガストロノミー(グリーンスター)にも選ばれている。ランチ6,776円~、ディナー1万890円~、要予約。 tel.0768-23-4488/石川県輪島市河井町4-142/11:30~13:30LO、18:00~21:00LO/月曜、火曜昼休



石川・金沢 ★★★ 小松

引き戸を開け、白木のカウンター席へと進めば、清々しく凛とした空気が満ちる「料理小松」。2016年にミシュラン二つ星を得、翌年8月には鱗町より移転し念願だった一軒家の店を構え、2021年にはついに三つ星に輝いた。
「日本料理の本質は、削ぎおとすことです」と慎ましくも気骨のある言葉。旬の美味しいものを選りすぐり、素材を生かす。良い器とのバランスを量る。飾り立てない。今日たどり着いた、“小松の料理”だ。
コースには折々の「スペシャリテ」が入る。たとえば冬の11月から2月ならば、蕪や白子などの煮物。日本料理の原点「だし」の加減、そして料理人の勘と腕が如実に表れる煮物は「献立の華」ということ。什器の収集にも傾倒しており、小松さんの好みを知る金沢の古美術商、京都や唐津などの道具屋が定期的に訪れる。季節が巡るごとにその席が恋しくなる、そんな求心力のある一軒である。予算の目安は2万円~で、完全予約制。
tel.076-224-0118/石川県金沢市幸町11-29/18:00~20:00LO/日曜、第3月曜休



石川・金沢 ★★ マキノンチ

金沢中心部にあったフランス料理マキノが、2020年7月、金沢市街を見下ろす卯辰山の中腹に移転。坂の上に立つ一軒家の民家を改装した建物は、見過ごしてしまいそうなほど隠れ家的な雰囲気だ。店内は飾りっ気のないシンプルな大人の空間。大きなコの字のカウンターが存在感を放っている。
フランスでの修業経験をもつ牧野シェフは、独自の鋭い感性で独創性あふれる進化系フレンチを創造している。ここでもそれはさらに進化を遂げ、有機野菜や新鮮魚介、ジビエなどを取り込んだ牧野流を味わえる。ランチ、ディナーともに1万8,000円のおまかせのみで、完全予約制。
tel.050-3503-3318/石川県金沢市山の上町25-18/ランチ12時一斉スタート、ディナー18時一斉スタート/ランチは日・月・火曜営業、ディナーは月・木・金・土曜営業



石川・金沢 ★ ゆづる

仕込みにじっくり時間をかける和食処として知られる「割烹ゆづる」。店主は、金沢の有名料亭などで腕を磨いた平井ゆづるさんだ。地元の食材にこだわり、近江町市場に足を運び吟味して仕入れるほか、春なら山に分け入りコゴミやコシアブラなどの山菜を採り、竹の子を掘る。海釣りにもでかけ、その成果を献立に生かす。
毎朝、清らかな湧水を汲むのも日課で、それは手削りするカツオのダシにも生かされている。「今日は気に入った皿が手に入ったから、何を盛り付けようかワクワクする」。そんな具合に、何事にも楽しんで挑戦する平井さんの料理は、和食の基本をしっかり守りつつもひらめきとアイディアに満ちている。
夫婦で営むため、目の届く範囲でのもてなしをしたいと店内は10席のみ。おまかせコース1万1,000円~、要予約。
tel.076-255-3780/石川県金沢市片町1-8-1 片町シャンテビル1F/18:00~21:00LO/日曜、祝日休



富山・南砺 ★★ レヴォ

四方を山に囲まれた奥深い谷あいにある利賀村。自然しかない秘境、その土地の魅力に惹かれてオーベルジュを開いた谷口シェフ。日本国内やフランスで料理の修業を重ね、2010年に富山へ、2014年に「レヴォ」開設、2016年一つ星、2020年にこの地に移転し、2021年には二つ星を獲得した。
「前衛的地方料理」とのフレーズを前面に掲げ、豊かな大地で育つ野菜や山菜、野山を駆けるジビエ、富山湾の魚介、山羊のチーズなど、地元の食材としっかり向き合って仕上げる料理は、生き生きとしたアートのように輝いている。食卓には地元作家の器やカトラリー、調度品など地元の工芸品も随所にあしらわれ、窓から見える木々や山の景色とも一体化。知らず知らずのうちに心も舌もカラダも満たされていくようだ。
レヴォは環境保全に努めるサステナブルガストロノミー(グリーンスター)にも選ばれている。ランチ、ディナーとも2万4,200円~、完全予約制。
tel.0763-68-2115/富山県南砺市利賀村大勘場田島100/ランチ12:00or12:30スタート、ディナー18:00or19:00スタート/水曜休(祝日は営業)



富山・南砺 ★ L’ensoleiller

南砺地域の環境や豊かな食材にひかれ、6年前に移り住んだオーナーシェフ高見さんが腕を振るうフレンチ、L’ensoleiller (ランソレイエ)。ゆるやかな丘陵地にある桜ヶ池河畔に佇む隠れ家的なフレンチで、元料理旅館の建物をリノベーションしたという室内からは桜ヶ池の水面がすぐそばに迫り、本場フランスを旅したシェフの思いがあふれた料理に彩りを添える。和洋がうまく融合した室内は天井が高く、城端絹や五箇山和紙などをあしらったゆったり落ち着いた雰囲気だ。まずは、盛り付けも美しくため息がこぼれるアミューズからいただこう。
料理は、富山湾の魚介をはじめ、地元の有機野菜や自然農法の食材を中心に使う地産地消がモットーで、自然環境の持続可能性を反映させるとしてサステナブルガストロノミーにも選ばれている。ランチ5808円~、ディナー7744円~と気軽な料金がうれしい。要予約。
tel.0763-62-2977/富山県南砺市立野原東1752-3/11:30~13:30LO、17:45~19:30LO/水曜、第2火曜休



福井・福井 ★ Les Queues

福井市郊外にあるLes Queues(レ・クゥ)は、東京で修業の後、福井で独立したオーナーシェフの阪下さんが営むフレンチ。食材が流通する過程すべてに気を遣い、環境も考えたうえでの料理に取り組む真摯な姿勢が好印象なレストランだ。
店内に石窯があることでも知られ、店の中央に存在感高めに備え付けられている。薪をくべる窯の火では例えば、奥越産30日間寝かせた放牧若牛の石窯焼きなどのメニューがあり、肉だけでなく魚、パンなどあらゆる食材が調理される。
阪下さんは、地産素材や食器で福井を表現し、生命への敬意のもと食材の特長を生かすフレンチを提供しており、自然環境の持続可能性を反映させるサステナブルガストロノミーにも選ばれている。予算はランチ3300円~、ディナー8200円~とリーズナブル。
tel.0776-53-4858/福井県福井市高柳1-712/11:30~14:00、18:00~22:00/水曜休